自治体都市計画の最前線



書 評
『建築士』((社)日本建築士会連合会) 2007.8
 地方分権の進展や三位一体改革等により、地域独自の取り組みの成否が地域の将来の浮沈を決するようになっている。本書では、田園居住、線引き制度、景観、地域地区・建築基準法、都市計画の変更、条例という分野ごとに、各自治体による先進的な試み26例を紹介している。
 全体で約340頁の大作であり、通読するのは相当に骨が折れる。しかし、全34本のレポートは、業務に直接携わっている自治体職員や、深く関わっているコンサルタント・専門家が執筆しており、平均9頁程度のボリュームの中に、具体的な制度やプロジェクトの概要、問題点・課題、得られる知見等がコンパクトに盛り込まれている。実務者ならではの視点、そして、物事に関する深い真理や、知る人ぞ知るのツボ、秘伝中の秘伝?が惜しげもなく披露されているような印象を受ける。
 都市計画の諸制度は、一般論として抽象的に説明されてもその内容や意義を理解することは難しいが、実例を通じて論じられると迫力があるし、よく分かる。また、幾つかの制度が組み合わせて使われたときの相乗効果も、実例に基づいて紹介されるとよくわかる。
 このように、同様の問題に関わっている者や関心を持つ者には非常に参考になる。自分たちのところでどうやって取り組もうかと思い悩んでいる自治体にとっては、玉手箱のような本ではないだろうか。
 通読・精読した方は、わが国の都市計画の最前線の動向と課題をハイレベルで修得したことになりそうだ。また、自分に関係のあるレポートだけをピックアップしてじっくり読む方法も有効だと思われる。そういう意味で、この本は実践都市計画の実例に関する優れたデータベースである。
(村主英明)

『地方自治職員研修』(公職研) 2007.7
 地方分権一括法の制定、都市計画法、建築基準法の改正と自治体都市計画をめぐる状況はここ数年で大きく変化し、地方自治体による主体的な活用・運用が求められるようになった。本書では、田園居住、線引き制度、景観、地区計画・建築基準法、都市計画の変更、条例の6つの項目について、都市計画・まちづくり分野の新しい試みを現場から紹介する。巻末には近年の都市計画関連重要判例もおさめている。事例が示す「課題」・「方策」・「今後へのとりくみ」は大きなヒントとなるはずだ。

『ガバナンス』(鰍ャょうせい) 2007.6
 地方分権一括法の制定と、それに続く土地利用関連法の改正による権限移譲、自治体の主体的運用を前提とする景観法の制定など、都市計画の分野における「分権」が進んでいる。
 無秩序な土地利用、建築物の高層化、中心市街地の衰退、コンパクトシティへの政策転換、景観保全への要請など、地域が多くの課題を抱える中、自治体の「力量」が問われる場面が増えてきている。
 本書では、「田園居住」「線引き制度」「景観」など6分野、計26の先進事例を紹介。執筆したのは、担当自治体職員を中心に、現場を知り尽くした人々だ。地域事情を踏まえた、通り一遍ではない深い内容は、実務家にとって大いに参考になる。