中心市街地の再生


書 評
『建築士』((社)日本建築士会連合会) 2007.5
 今や「中心市街地の活性化」は全国の都市における最重要課題であるが、同時に、実際にはその空洞化・地盤沈下が深刻な問題となっている。平成10年制定の「まちづくり3法」が十分に成果を上げていない(「全敗状態」というキツイ批判も)との反省に立ち、昨年、中心市街地活性化法が抜本的に改正され、その政策体系が再構築されるとともに、都市計画法の改正により、郊外における大規模集客施設の立地規制が強化されたことはまだ記憶に新しい。
 さて、何事も海外の制度の輸入がお得意なわが国だが、また「欧米か!?」と言うなかれ。アメリカの「メインストリートプログラム」は、中心市街地の歴史的建築の保全・活用と経済活性化を組み合わせ、全米1,900地区で実施されている。取組みが開始されて30年で質・量ともに素晴らしい実績を上げている。
 本書は、メインストリートプログラムの概要とアメリカでの実践について紹介するとともに、日本への導入の可能性について論じている。通読すると、街の目指すべき方向性の明確化、汎用性と実効性のある方法論、フルタイムマネージャーの確保など、わが国にとっても有益なアイデアやノウハウがいっぱい出てくる。しかし、すでに長年取り組んできながらロクな成果を上げられず惨憺たる現状を抱えるわが国で、それらからちゃんと学ぶことができるのかと想いを巡らせると、もどかしさ、歯がゆさを感じてしまう。表面的、部分的にマネをするのではなく、本質的なところを理解した上で、日本風にアレンジしながら活かす工夫が不可欠だろう。著者たちも同じような思いを抱きつつそれを本書で切実に訴えている。
(村主英明)