『金融財政事情』((社)金融財政事情研究会)2006.7.3
本書は、PFI(Private Finance Initiative)、PPP(Public Private Partnership)など公民連携の部門で、国内をリードしている日本政策投資銀行の出身で、かつ、その部門の要職にあった方の著作だけあって、約200ページとコンパクトながら日本の公民連携等に関する体系的な書籍に仕上がっている。また、海外事例ならびに著者が政投銀在籍当時、実際に関与した豊富な国内事例を紹介しながらの具体的な解説が多く、専門性が高く難解な内容を平易にわかりやすくまとめており、この分野の入門書としては一押しの内容である。
本書のテーマは「地域再生」「公民連携」「金融」の三つであり、それらに対応した三部構成になっている。
「地域再生」においては、地域再生プロジェクトに関する近時の環境、PFI、PPPについて海外事例、国内の状況等を解説している。
「公民連携」については、公民連携のカテゴリーの一部として、官が保有する土地や建物を売却したり、賃貸したりすることによって民にプロジェクトを進めてもらう「公共資産活用型」の類型が紹介されており、地方都市に住む者として、とくに興味をもった。
本書のなかで一、二部に共通したキーワードだと思えるのは、「リスクは得意なものが負担することによって小さくなる」ということだろう。地域再生プロジェクトも、公民連携プロジェクトも、対象となる事業のそれぞれのリスクを負担することが得意な人を集めて協働することが重要であり、失敗しているプロジェクトはリスクのとれない人がリスクをとっているケースだと思われる。その意味で種々のプロジェクトに携わる関係者にとって、「リスクの分析」と「リスクの分担」の考え方は必ず理解すべき原理・原則であろう。
また、第三部の「金融」では、「金融からみた地域再生プロジェクトの実現要素」としてプロジェクトの資金調達原理を説明しているが、内容としてはいわゆる「プロジェクト・ファイナンス」の解説だ。実際にプロジェクト・ファイナンスに従事した方ならではの深い理解に基づいた記述が随所にみられる。
一方、一つ一つの地域再生プロジェクトにプロジェクト・ファイナンスに準じたファイナンス・ストラクチャーの組成およびドキュメンテーションを要求するのであれば、その担い手がどれほどいるのかという懸念が生ずる。そのような人材の圧倒的な不足が、地域再生プロジェクトを推進していくうえでボトルネックとなっている面もあるからである。
その意味で、「地域再生の現場で金融が果たしうる役割は限りなく大きく、その役割の大きさを自覚して行動することが求められる」とのメッセージは、地域金融機関に身をおくものとして示唆に富むところ大であった。
(中国銀行金融営業部次長/浦上達夫)
『建築知識』(エクスナレッジ)2006.7
1999年にPFI法が制定され、官の管理の下、民間が公共サービスを行えるようになった。しかし、民間主導の運営では、投資以上の事業価値が必然だ。そこで第三者である金融機関がプロジェクトに積極的に関わり、成功へ導く原動力として期待される。
本書は、公と民が連携して取り組んだ実例が紹介され、金融がどうあるべきかを現場の視点で説明している。
民単独の地域再生は、規制や土地取得が大きな障壁となる。官がインフラ整備を行い、その後に民間に公募するなど、公民連携とともに役割分担が必要であると論じている。
月刊『ガバナンス』(鰍ャょうせい)2006.6
都市再生、地域開発プロジェクトを進める上で最大の障害は資金調達である。いかにして資金を調達するのか、そのために地域はどうあるべきなのか、また、地域のために金融はいかにあるべきなのか。
本書は、プロの銀行マンとして金融の世界から地域再生にかかわってきた著書が、現場の視点で金融の論理・手法をわかりやすく読み解き、リスクを軽減し、目的達成へと導くための公・民・金融連携の可能性を探ったものだ。
「地域再生」「公民連携」「金融」の三つの概念をキーワードにしながら、百年後の地域価値を創出するための融資・投資・リスク分担の論理や手法の基本が理解できる絶好の書だ。
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