書 評
『地域開発』((財)日本地域開発センター)2004. 12
  過疎や高齢化、環境悪化といった危機に直面した地域では、必要に迫られる形で「まちづくり組織」が誕生し、地域の課題に対し自律的な活動を展開している。「まちづくり組織」の形態は多様であり、NPOやTMOのみならず、行政区や町内会など従来の組織も含まれる。
  本書の前半部では、こうした「まちづくり組織」の形成過程を当事者へのインタビューにより浮き彫りにし、合意形成の場、協働規範による組織運営、ネットワーク的結合などにも着目し、組織の本質を多面的に捉えようとしている。また後半部では、継続的なまちづくりの仕組みとしての「まちづくり会社」を取り上げている。中心市街地活性化法により、多くのTMOが認証を受けているが、「まちづくり組織」への公的支援を整備した点で一定の評価を受ける一方で、従来の行政的枠組みが維持され、住民組織との連携が不十分であると本書は指摘している。
  本書は先進事例の単なる紹介にとどまらず、今後の「まちづくり組織」のあり方への深い示唆を与えている。

『地方自治職員研修』(公職研) 2003. 12
  都市で、中山間地で、地域の危機に直面した人々が志をともにして、まちづくりに立ち上がり、まちの経営に乗り出している。そうした「まちづくり組織」の実践を日本各地に追ったルポタージュ。過疎・高齢化に揺れ、コミュニティの存続そのものの危機にある山間部。中心市街地が衰退し、町並みが壊されていく一方で、公害等の環境問題も抱える都市部で、まちづくり組織はいかにまちを変えたか、そしてまちづくり組織自体はどのような課題を抱えているのか、が明らかにされている。