図解 ここが見どころ!古建築


はじめに

 古くから古社寺を訪れる人は多く、ほとんどの場合その目的は信仰のためであったが、近年になって文化財的興味から古社寺を見て歩くことが盛んになってきた。
 ただ、せっかく実際に有名社寺の建築を目の前にしても、大きいとか、立派だとかの感想を持つことはできても、どこがどう素晴らしいのか、何が見どころなのかといったことは、勉強していないことにはなかなかわからないものである。そこで、いろいろな資料に当たってみることになるのだが、社寺のパンフレットに「○○造」 「○○様式」などと書かれていても、どこがそうなのかわからない。ガイドさんやお寺さんの説明もそこまでは詳しくない。趣味人のホームページ、ブログや専門の本は、読み方すらわからない専門用語がどんどん出てきて、そもそも建築のどこの部分の話をしているのかすらわからない。大学の先生の書いた文章は、日本建築史の基礎的な知識を前提として書いているので、ついていけない。
 本書は、そういった読者のために、日本の伝統的な建築を知る上で欠かすことのできない有名な社寺等を時代の流れに沿って題材として取り上げ、その「見どころ」だけを解説し、日本建築の要点を会得していただくことで、他の多数の日本の伝統的な建築を見るときの判断の基本にしていただこうという本である。
 事例として選んだ建物は、比較的交通の便がよく、かつ各時代の建築様式の特徴を典型的に示しているものとした。それぞれの「見どころ」を知る上で必要な関連の知識は随時その箇所で紹介した。専門用語にはすべて振り仮名をつけたので安心してお読みいただきたい。
 本書が、「何となく」で終わっていた日本建築への理解の助けとなれば幸いである。

妻木靖延