建築・都市のプロジェクトマネジメント
クリエイティブな企画と運営

はじめに


 この本は、プロジェクトマネジメントとは何かということを広く学びたい人、建築・都市開発の勉強・研究をしたい人、あるいは建築・都市開発の仕事をし始めた人にとっての入門書である。

 特に1章は、あらゆる分野の人に広く扉が開かれている。少しとっつきにくいプロジェクトマネジメントに関する基本的な言葉や領域、課題の整理を、できるだけ直感的に頭に入っていくように、身近な例を挙げながらわかりやすく記述している。

 2章以降は、建築・都市開発の分野を対象にしている。2章は社会背景や社会課題の認識の話に始まり、建築・都市開発分野におけるプロジェクトマネジメントの概念と目的を総論としてまとめている。3章はプロジェクトマネジメント業務の流れと組織の立ち上げについて述べている。4章と5章はやや専門的な内容になる。4章は企画段階のプロジェクトマネジメントの3つの柱になる考え方、5章は実行段階のプロジェクトマネジメントの実践を中心に論を進めている。建築・都市開発が対象ではあるが、2章と3章はもちろん、4章以降も、様々な分野に応用がきくと考えている。

 学生だけでなく、この分野の初心者を読者に想定しているが、その道のプロフェッショナルの方々にも時間があれば手にとって目を通していただきたい。都市・建築開発に関わる人、つまりディベロッパー(開発事業者)、投資家、建築設計者、デザイナー、コンサルタント、工事施工者、建材メーカー、施設経営会社、施設管理運営会社、行政担当者などである。

 プロの皆さんは、こんなことは百も承知、あるいは現実はしがらみだらけでこんな単純な話ではないとおっしゃるかもしれない。しかし、皆さん、頭が固くなって過去の成功例のトレースばかりしていませんか。内向きになっていて本質的なことが疎かになっていませんか。数字の奴隷になって最初の理想を簡単に諦めていませんか。マーケティングレポートを鵜呑みにしたり、理念や思想までコンサルタントや広告代理店に丸投げしていませんか。皆さんご自分の胸に手をあてて考えてみてください。

 日本の都市の空間や景観をもっと魅力的にするために、国内外の多くの人が楽しみ交流できる場や機会を創造するために、豊かな気持ちで働いたり快適に暮らせる環境を整備するために、そして社会の様々な課題を解決するために、皆さんも一緒にクリエイティブなプロジェクトマネジメントを考えてみませんか。

山根 格