マンション管理評価読本
価値を上げる管理の常識

おわりに



 本書は、京都の地においてマンション管理をキーワードに集まった、管理組合理事、建築、法律、不動産の実務家の方々や研究者によって立ち上げた「NPO法人京都マンション管理評価機構」の活動の到達点をまとめたものである。本書の刊行にあたって、マンションの管理組合も定かではなかった1980年代の初頭よりマンション問題に関わってきたものの一人として、マンション自らが自己の評価に立ち上がった管理と自治の力に、深い感慨を禁じえない。
 昨年の春、私は東京近郊のある大学で行われた学会で、地域社会の再生といった観点から京都でのこの管理評価の取り組みについて報告を行った。その折、東京の建築関係の方であったと思うが、「こうした取り組みに参加している不動産会社は、参加していない不動産会社とどのような点で違いがあるのか」という質問を受けた。私はいささか戸惑ったが、「マンションを良くしたいという志だと思います」と応じた。「一体不可分の土地・建物を区分して所有する」マンションは、幾分わかりにくい区分所有法の規定を受けるものである。こうしたマンションに対して現場の最前線に立っている不動産事業者の方々にあっても、より健全で開かれた市民的市場の醸成が欠かせないという問題意識が私たちと共有されていたように思う。
 京都マンション管理評価機構の設立に先立って、2006年4月に私たちは「京都マンションデータバンク」を稼動させ、京都市内全域を網羅したマンションの基礎的データを集積し、ウェブサイトで公開した。これは労力と費用が何かとかかる作業であったが、情報の収集だけでなく、費用の点においても支えられたのが、市内で不動産会社を経営してこらた方々の力であった。こうした事業家の方たちの理解と支えがなければ、辿り着くことのできなかった試みである。
 第2ステップの、京都のマンションとしてのビジョンと管理評価の基準づくりには、京都市の住宅政策課の伴走を得ながら、オール京都で取り組むことができた。さらに組織づくりにおいては、国の「長期優良住宅先導的モデル事業」の採択を請け、カタチを整えた。
 そして今、私たちの活動が目指してきたところを出版物にまとめて、この活動をより広げたいという思いを、厳しい出版事情のなかで理解いただいた学芸出版社の支えで実現できることに、心からお礼を申したい。とりわけ編集部の前田裕資さん、森國洋行さんの丁寧な編集作業とスケジュール管理がなければ、出版に漕ぎつけることはできなかった。改めてお二人に感謝申し上げたい。
 なお、本書は「一般財団法人住総研2010年度出版助成」を受けたことを最後に記しておく。

2011年12月
NPO京都マンション管理評価機構理事長 谷口浩司