建築半丈記


書 評
『環境緑化新聞』2006.5.15
 本書は、関西大学工学部に所属していた工業技術研究所が定期刊行していた工技研ニュースに「半丈記」と題して連載していたもの。もともと著者の前に機械工学科の教授であった倉田氏が60回にわたって書いていた。断わったにもかかわらず、その後を継ぐことになり“恥をさらすことになった”とは著者談。副題は「建築史家のよもやま話」。
 第1章は「人と栖と」。古建築の調査についての話などが書かれている。話題は建築のことだが、エッセイということもあり、いろいろなことを織り交ぜながら綴られているため、建築になじみがなくても、まるでなじみがあるかのように楽しめる。愛猫に関する話も多い。だからというわけではないかもしれないが「猫と建築」という話も。これは、和風建築に関する用語には猫足、猫木、猫車、猫台、猫石など、猫がついた言葉が結構あるというもの。
 第2章はまち歩きの話、「犬も歩けば」。第3章「西の民、東の民」では世界の建築の話も。文中では、古くなった言い回しや言葉も意識して使用されている。