まちづくりイベント・ハンドブック
2章2節

これからまちづくりを始める

図

世田谷区では清掃工場の煙突のデザインを
募集し、 1040もの市民の応募の中から選んだ
(資料提供・世田谷まちづくりセンター)


 まちづくりは長期的には、 対象とする地域や地区の環境を良くするために行うものであるが、 そこに住んでいたり、 何らかのかたちでそこに関係していた人々にとって、 本当にその地域が良くなるか信じがたいものであろう。 それは、 まちづくりというものが、 なかなか複雑な事業であるため、 全体像を把握しにくいということと、 その結果、 まちづくりが完了した後の自分たちの生活像が描きにくい、 ということによる。

 歴史的に見ると、 まちづくりに住民が参加する機会は少なかった。 しかし、 近年さまざまな形で住民参加型のまちづくりが行われるようになり、 潮流となろうとしている。 こうした中での92年の法改正およびそれを受けての93年6月の都市局長通達「市町村の都市計画に関する基本的な方針について」は、 こうした都市計画の大きな潮流を制度化したものと言える。

 こうした時代を迎えて、 どのような方法で関係者が対話をして行くか、 特にこれからまちづくりを行おうとする時の、 関係者の対話のやり方が、 今求められている。 もちろん従来から、 まちづくりを始める時にはかなり濃密な対話があった。 そうでなければまちづくりは始まらない。 ただ、 まちづくりを仕掛けるのはほとんどが行政サイドであって、 上記の意味での対話は行政の意図を関係者にわかってもらうという、 困難ではあるが単純な構図のものであった。 方法も「説明会」が主流で、 それに若干のオプションがくっついた程度であった。

 しかし、 まちづくり自体が、 かならずしも行政が仕掛けるものだけでなく、 市民が仕掛けるものも全国的に増加してきていることを考えると、 従来やってきた方法だけでは十分な対話が進まない。 この場合の対話の方法は関係者がまちづくりを始めることに自ら参加することがポイントになる。 そうした対話の方法の一つがイベントである。 特に、 できあがった姿について、 様々な方法で関係者が共通認識をもつためには、 まちづくりイベントによる方法が一定程度有効であると思われる。 関係者が共通認識をもつことができれば、 はじめて、 そのまちづくりの妥当性、 進め方などが、 関係者によって前向きに検討されることになる。

 その意味で、 ここでいくつか紹介するまちづくり実験は、 関係者がセイムスケール模型の中に入りこみ、 出来上がった姿を実体験でき、 費用はかかるが有効な手法である。 今後、 まちづくりの多方面の分野での活用が期待される。

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