このシンポジウムはランドスケープ復興支援会議(通称:阪神グリーンネット)が主催したものです。
被災地では阪神グリーンネットをはじめ、 緑や花の分野から何らかの形で復興を支援するグループが多く存在しますが、 これらを一堂に会し、 互いの情報交換とともに今後の連携強化、 さらには緑からの復興まちづくりを声高に唱えようと企画されたものでした。
最初に阪神グリーンネットのほか、 参加したドングリネット神戸、 ひょうごグリーンネットワーク、 がんばろう神戸、 コープグリーンネットからそれぞれの活動報告がなされ、 仮設住宅の環境改善や被災者の心のケアの一助に緑や花の存在が大いに役立ってきたことを確認しました。
続いて研究者・住民・行政・ランドスケープコンサルタント・まちづくりコンサルタントという5つの立場から5人のパネラーが発言しました。
そこでは、 「単なる防災公園ではなく人々の生活を守るという生活風景の発想に立った公園を」、 「生きた公園とするための住民参加のワークショップによる公園づくりを」、 「住民自身が生活レベルで確保していける花や緑に対する行政の支援を」、 「専門家は大きな視点と時間を見据えながら、 景観という視点からの提案をすべきだ」、 「人間以外の自然を大事にした景観デザインを心がけよう」、 「緑を起点にまちづくり協議会を全市で立ち上げよう」などの提案がなされました。
これらを受けた全体協議から、 1)緑からの復興まちづくりのためには、 住民や行政、 専門家、 支援ボランティアなどが広くしかも緊密に連携していくこと、 2)区画整理事業地区など今後の復興まちづくりにおいて緑分野の専門家が積極的に関与することが重要であること、 3)とくに住民の意識が自宅再建からまちづくりへと移る段階で緑の重要性をしっかり認識してもらうこと、 そして4)ワークショップ手法などにより住民が愛着をもてる公園づくりをしていくことなどが、 参加者の共通認識として得られたと感じています。
参加した活動グループからは、 ボランティア活動について資金面・労力面などからの限界を感じている側面も報告されましたが、 こうした点を打破していくためにも、 住民、 ボランティア、 専門家、 業界、 行政といった異なる立場からなる現状の各活動グループが、 それぞれの個性・得意技を生かしながら、 相互補完的に連携(ネットワークのネットワーク)し、 各種の基金を通じた個人・企業の善意、 さらに行政の大いなる支援を受けながら、 緑からの復興まちづくりを目指したいとの意を強く持ちました。
専門家集団である阪神グリーンネット内部にも、 これまで復興まちづくり(まちづくり協議会等)への専門家としての関与の出遅れに対する自省の声が高いのですが、 さまざまな場所への緑の専門家の関与の可能性とそれへの期待、 あるいはその責務が再認識されたシンポジウムでした。
阪神グリーンネットのパネル・移動生垣展示
近畿都市緑化祭(10/1〜6、 東遊園地公園)にて
また、 主要コミュニティ道路と街区公園は計画決定ではないが、 おおまかな位置が示されている。
●この1次都市計画決定の意図について行政から直接耳にしなかったものの、 2階層性の計画システムが採用されていることは容易に理解できる。
これは広域と狭域、 中長期と短期の間の計画上の整合性をとるとともに、 計画の規範性と住民参加による実現可能性をリンクさせることを意図するものであろう。
1次都市計画決定の内容は、 地域的(広域的)で中長期計画タームからのいわば骨格計画であるとともに、 対象区域内の空間形成の規範を形成する軟らかい計画であるといえる。
その場合1次都市計画決定後から始まる協議会のまちづくりは、 その骨格の中で具体的な肉付を行う比較的狭域的な街区計画が主となるだけに、 その前提となる骨格計画である1次都市計画決定の内容が、 これまでの市街地形成過程や状況との関係、 また新しい骨組みによって形成される空間システムが住民にとって望ましいものであるかどうかという点についての評価がまず問われることになる。
200mメッシュに歩道と2方向車線を備えた幹線的道路を配置することは、 自動車交通の集約化を図ることになり、 200m四方(4条里制街区)を1単位とする自動車交通に対して安全な「居住環境街区」(安心安全街区)を形成することを可能とする。
当地区において、 条里制に基づく耕地整理が既にされていたことが、 この計画形成・計画決定の過程を比較的わかりやすくしていると考えられる。
この分類を基にしながら、 計画形成・計画決定過程を整理すると以下のようになる。
1次都市計画決定の経緯から協議会においてはまず議論の対象となっている。
ステージAは、 都市の骨格形成であることから、 中長期の地域形成上の視点が必要であるとともに、 これらの根幹的都市施設の位置にある関係権利者が他の権利者に比べて不利益にならない方策が重要なポイントといえる。
また街区外周道路等主要区画道路も2次都市計画決定の対象となった。
街区公園については、 1協議会では対応できない面もありそれも要因となって協議会の合同による検討が行われ決定されている。
主要コミュニティ道路については、 先行する協議会において、 一部の協議会の連携により幅員等を検討されたが、 後続する協議会においては、 先行案を基本に検討するという対応となった。
特に工業系区域においては、 住工分離を図るため、 関係協議会が連合して土地利用計画とそれに対応する区画道路が計画された。
当地区では現在、 地区計画、 共同建替参加者の確定による共同建替区域の確定作業が進められている。
(平成8年7月に2次都市計画決定がされた。)
まちづくり提案の先行協議会と後続協議会の双方を配慮した時期を事業計画縦覧のタイミングとして行われた(平成8年7月に事業計画決定がされた)。
●地権者は、 共同建替や住工分離などまちづくり提案に定められた土地利用計画を参考にして、 希望する土地利用計画の区域への飛換地も配慮されることになっている。
公益的施設集中街区や既存マンション街区は協議会ができていない。
まちづくり提案が事業計画縦覧前に提出されたものは、 事業計画に折り込まれている。
事業計画縦覧後に提出されたものは、 今後事業計画の変更でまちづくり提案にさし変えられる予定である。
まちづくり提案がまだ出されていない街区も提案が行われれば事業計画の変更等により対応されるであろう。
まちづくり提案が未提案の街区は事業計画決定のプランを入れている。
土地利用が白地の街区は、 土地利用として共同建替適地のみを定めた街区又はまちづくり提案がまだ行われていない街区である。
この場合の区画道路等の変更は事業計画の変更によって対応される。
p2,3,4
移動生垣は、 被災地で比較的手軽に緑化できる方法として考案されたもので、 当日は10個の移動生垣を作り、 参加された住民の皆さんに安価でお分けし、 実際に各家に設置までお手伝いしました(第1回の楠丘プロジェクトは「きんもくせい」30号参照)。
II-4 計画形成・計画決定の過程(表-1)
●協議会による計画形成過程と対応して、 段階的に計画決定が行われているところが今回の土地区画整理事業の特色である。
―段階的プロセス―1)計画形成のステージ
●土地区画整理手法によるまちづくりのステージを便宜上表-1のように分類することができる。〈ステージA〉
ステージAは、 根幹的都市施設(幹線的道路、 近隣公園)都市計画決定段階のものである。
図5・道路網の状況(五位池線以東)
図-6・居住環境街区とコミュニティ道路配置
についての基本モデル〈ステージB〉
ステージBは街区公園や主要コミュニティ道路といった根幹的なアメニティ基盤施設であり、 1次都市計画決定の際の図面におおよその位置が示されているものの1次都市計画決定の対象とせず、 協議会のまちづくり提案を基本に縦覧、 意見書の提出という手続きを経て2次の都市計画として決定された。〈ステージC〉
ステージCは、 街区内の市街地形成であり、 街区単位で結成された協議会においては最も主体的な取り組みの対象であり、 街区内の土地利用と生活道路を計画するものである。〈ステージD〉
ステージDは、 土地区画整理事業による公共施設計画を基本に望ましい生活環境、 産業環境を形成するため、 より具体的な上物利用の検討を図る段階であり、 現在はこのステージの取り組みが始まっている。2)まちづくり提案
●各協議会から市長に提出された「まちづくり提案」の内容は、 基本的には上記のステージCを中心にステージA〜Cを含めた計画提案となっている。3)計画決定等のプロセス
●平成7年3月の1次都市計画決定後の計画決定過程は以下のとおり。
この事業計画案は、 まちづくり提案が行われた街区については提案が盛り込まれているが、 この時点で提案が行われていない街区は市案となっている。
この段階でまちづくり提案がされていない街区について、 以後、 提案が行われた場合は市案をまちづくり提案に基づいた計画に替え、 これを事業計画の変更で対応する。
この事業計画案の縦覧時点では、 最初にまちづくり提案が行われた街区(協議会)ではほぼ半年近く経ている。
この共同建替の参加権利者が確定した場合は共同建替区域(共同住宅区)を確定し、 それに伴う区画道路の変更に対応した事業計画の変更が行われることになっている。
II-5 仮換地
●仮換地は、 仮換地を行うための諸条件が整った街区(区域)から仮換地が進められると考えられる。
表-1・計画形成のステージと計画決定
図-7・まちづくり提案(五位池線以東)
店舗、 併用店舗、 業務、 その他施設適地
「図-7まちづくり提案(五位池線以東)」
についての説明(図-7)
('96.9.12記)
図の土地利用計画は、 まちづくり提案による土地利用計画を入れている。
INFORMATION
第3回都市復興研究部会・公開研究会
〈神戸西部〉神楽・二葉地区:安藤元夫
〈神戸東部〉住吉地区:重村 力
〈芦屋・西宮〉田端修、 小浦久子
水口俊一、 土井幸平
(※この催しは、 第24回水谷ゼミナールも兼ねています)
復興まちづくりセミナー「都市復興の新たな課題を考える」
―復興の全体像把握に基づいて
(神戸市中央区山本通4丁目22、 JR元町駅より山側へ700m)
移動生垣づくりを行いました
10月6日(日)、 神戸市灘区寿公園にて楠丘プロジェクト第2弾として移動生垣づくりの実演講習会を行いました。
寿公園での移動生垣づくり風景第2期コレクティブハウジング事業推進応援団
―第1回ミーティング―
■連絡先:阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク事務局
P.4
Restoration from the Hanshin Earthquake Disaster/SUPPORTER'S NETWORK for community development “Machi-zukuri”
〒657 神戸市灘区楠丘町2-5-20
まちづくり株式会社コー・プラン
TEL.078-842-2311 FAX.078-842-2203
担当:天川・中井
〒657 神戸市灘区六甲台町1
神戸大学工学部建設学科
TEL.078-803-1017 FAX.078-881-3921
担当:大西 一嘉
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