そんなウィークポイントを補完し、被災者がもっとも必要とする情報をまちがいなく発信し続けたのは、もっともきびしい立場におかれながら、時間的、経済的余裕のない中で手づくりのニュースをつくってきた「まちづくり協議会」だろう。
私自身、被災地でまちづくりコンサルタントとしで20箇所の「まちづくり協議会」と行動をともにしてきたが、1つの協議会で平均して1年から1年半の間で10号ぐらいのニュースが出ている。この間200号ほどのニュース発行の支援をしたことになる。毎週末になると若いスタッフが集まって、長さ4メートルほどの長い木のテーブルいっぱいに山積されたニュースを深夜まで、封筒につめ、切手を貼る作業に追われている光景が、今ではすっかり定着してしまった。この「長大テーブル」も震災後、この作業用に「特注」したものだ。
ニュースを出す限り、まず確実に届くようにしなければならない。はじめに住民の人たちの所在地確認に大きな精力がそそがれ、その後も転々と移動される状況を把握し続けねばならない。今でも週に何人かの方からは「古い住所で送られるので、手元に届くのが遅れた」という苦情電話が入る。その度に、それだけ情報を待っておられるということ、またそのタイミングがきわめて大切―たとえば共同再建の仲間に入るかどうかのわかれめに立つ―ということで、ニュースのはたしている役割の重さを感じさせられることになる。
復興まちづくりはいうまでもなく「いつもにこにこ、みんなで復興」というたぐいのものではない。いつもトラブルの種がまかれていたり、地雷がいっぱいの荒野を一歩一歩進むようなものだ。しかしだからといってやり方がない訳ではないし、前進するしかないという事態でもある。しっかりしたまちづくり組織をつくること、多くの人が実質的に参加する民主的な運営に徹すること、そして正確で十分な情報が行きわたること、といったまちづくり活動の原則をきっちりとおさえてやれば、無用なトラブルは大抵は未然防止できるものだ。
まちづくりニュースは、住民が散在している震災復興においてはそんな住民活動の基盤を支えるもっとも重要な役割をはたしてきたと思う。これらニュースの短くも密度高い歴史は、まちづくりのストックそのものだろう。ここで経験されたことが、これからのそれぞれの地域に、これからも永く引きつがれること、そして他の全国の各地でその経験が生かされることを期待せずにおれない。