この地区に「桜口・備後町3丁目まちづくり協議会」が設立されたのが一昨年の11月、以来これまでに9回のまちづくりニュースを発行してきた。その9回をふり返ってみると、ニュースの内容が徐々に変化してきていることがわかる。
初期のころは、通常の協議会ニュースがそうであるようにまちづくり集会の呼びかけや報告、意向調査の結果等をおもな内容として掲載してきた。ところが第4号あたりから地元の生の声を載せるなどできるだけ親しみ易いニュースをとりあげるようになり、第7号以降はよりその傾向をつよめ、まちの様子や人々の写真を中心にした構成へと移行した。
こうしたニュース構成の移りかわりは、同時にこの協議会の意識の変容を体現している。周辺の地域が再開発事業の名のもとにまがりなりにも前進をみせるなか、とり残されていく焦りと不安の渦中で結成された協議会は、その初動期に盛んにまちづくり計画や再建計画のための集会への参加を地元に呼びかけた。まちづくりニュースはその主たる媒体であった。ところが具体的な共通目標もなければ対施行者といった共通の相手もいないこの地区では、地元の反応は乏しく半ば協議会が一人歩きしているような状態がつづいた。既存の自治会は解散同然、住民活動の蓄積も経験もない。「走りすぎた」協議会への誤解や反発もあった。そんな地区で住民主体のまちづくりを進めていくためには、まず何より協議会の存在を周知徹底させ誤解や偏見を解くことが先決だと気づいたとき、ニュースのあり方に対する考え方も変わった。
震災後の住民主体のまちづくりは難しい。急がなければならないという前提がある。しかし「桜口・備後町3丁目復興まちづくりニュース」は地元に「復興」を促す内容から「現状」を共有する内容へとフローチャートを逆にたどるようにテーマの力点を移した。紆余曲折を経てまちづくりニュースはようやくスタート地点に立ち、地元へ対話を願うメッセージを送った。地元がこれをどう受けとめるかはわからない。ただ、地道な活動の持続以外に信頼関係を育んでいく近道はないのだろうと思う。