都市環境デザインの仕事

書評


『地域開発』((財)日本地域開発センター) 2002.10
 「都市環境デザイン」響きも格好良いこの領域に魅かれる人は多いのではないだろうか。しかし一方でこの用語は含意が広く、「仕事」としては具体像が捉えにくい。本書では、「都市環境デザインの仕事」が具体例を通してわかりやすく紹介されている。
 実際には、「都市環境デザイン」に関わる人達の職業は様々であり、「都市環境デザイン」という概念の捉え方も立場によって異なる。第T部では、行政、建築、風景デザイン、都市計画など様々な領域に身を置く執筆者が、自身が携わった事例等を通じてその考え方を述べている。また第V部の20人の執筆者による体験談は、この領域との出会いも関わり方も千差万別で面白い。
 本書の特徴は、この領域を志す人の格好の(就職)手引書にもなっている点である。第U部は、コンサルタントやディベロッパー、設計事務所といった仕事場案内。仕事の内容、求められる人材のみならず、採用情報や情報検索リストまでついて実用的である。


『新建築住宅特集』(叶V建築社) 2002.2
 「都市環境デザイン会議(JUDI)」は1991年5月に設立され、各地域で都市づくりにかかわる人びとの交流を図り、都市環境デザインの向上のために活動を行っている。本書は、その関西グループが毎月開催しているセミナーのうち、とくに学生や若者に向けた内容をもとに、新たに編集・執筆されたもの。「序」の中で鳴海氏は、都市環境デザイナーは都市計画家の範疇に入るが、「とりわけ、環境に対する〈感覚〉的側面、つまり〈デザイン〉の側面を重視することによって、質の高い環境の形成を目的にしている」とする。36人におよぶさまざまな立場にある執筆者の文章からは、その職域の大きな広がりと可能性を感じ取ることができよう。


『造景』(建築思潮研究所) No.35
 建築家、ランドスケープアーキテクスト、土木デザイナーなど、様々な職種の専門家が都市環境デザインにかかわり、協働作業を行っている。都市環境デザイン会議は、そうしたジャンルを超えた人々が集まり、都市環境を向上させるため活動している。本書はその関西ブロック所属のメンバーが「都市環境デザインの仕事」について都市デザインを志す若者に向けて語ったもの。
 第1部の「都市環境デザインの世界」は、行政、まちづくり、ランドスケープ、建築、土木デザイン、ライフスタイル、都市計画の七つの側面から都市環境デザインを論じている。
 第2部「都市環境デザインの仕事場案内」は、建築設計事務所、ゼネコン、デベロッパー、ハウスメーカー、土木コンサルタント、造園設計事務所、まちづくりコンサルタント、行政という職場を紹介。
 また、第3部の「プロフェッショナルをめざして」は、20人の若手が登場し、先輩としてプロへの挑戦を語っている。


『建築士事務所』((社)日本建築士事務所協会連合会) 2002.2
 仕事としての都市環境デザインにはどのようなチャンスがあり得るのか。執筆者36人の考え方と分野別の仕事場、そして実践の過程を述べるものである。現実の仕事としての都市環境デザインは、専門分野はもちろん、働く上で所属する仕事場、あるいは立場などによって、関わり方は多様であるだけでなく、分野をまたいだ協働関係を築くことは欠かせないだけに、実践経験とその醍醐味を伝える本書は貴重。就職に関する知識や情報も掲載されている。