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衛生設備のトラブル50 プロのノウハウ




まえがき



 建築と設備、それは不即不離の仲である。離れたくとも独り歩きできないのが設備(空調・衛生・電気)であり、独り歩きされては建築上都合の悪いのが設備である。建築と設備のいずれを優先させるかは、その建物の用途や機能によって決まるのだが、多くの場合、建て前と本音が違うようだ。
 結果として生じたトラブルは、思いもかけぬ出来事から、くりかえして起こすもの、ギリギリの判断から起こり、やむを得ぬと思うものまで多様である。そしてトラブルの多くは「待った」がきかない。もう少し配慮しておけば、もう少し検討を重ねておれば、もう少し声を大きくしておければと、悔んでも悔みきれないことも屡々である。
 本書は、一建築技術者としてもう少し設備の実際の知識があったらとの思いと、一設備技術者の、もう少し建築技術者の理解を得られていればとの思いが一つとなった企てで、日本建築協会の組織をとおしてトラブル集に編まれたものである。
 今回は空調と衛生について、協会に参加する建築設計事務所で設計監理をゼネコンの設備部門や設備施工会社で施工や技術管理を担当する。それも斯界のトップにある実務家の方々に参加いただいて研究会を組織し、日頃それぞれの立場で痛い目にあったことや、TQCの中でクローズアップされたことなどを、隠すことなく集めることができた。
 度重なる協議の結果、集まった多くの事例のうち、設計技術者の専門的知識に属するものを別企画とし、本書では、建築の設計監理やげんばを直接指導する建築技術者、建築との関わりの深い中で設備の設計監理や直接施工にあたる設備技術者達に役立つよう、空調・衛生のトラブルをそれぞれ50例を目処に絞り姉妹編とした。内容は具体的事例を示し、その原因と直接的な対策を解説つきであげ、トラブルを予防し、二度と誤りを起こさぬためのヒントを加え、チェックポイントまたはマニュアル化の足掛りとした。
 設計は斯くなるであろうとの仮説である。それが実像となったとき、計画と実際にずれが生じる、そのずれを明らかにし、原因をつきとめて対策し、フィードバックすることは、新しい展開につながる。
 本書はその一翼を荷なうと共に、学者ではなく、実務家達のまとめた実務家のための実務の書である。
1985年6月4日
建築設備トラブル研究会
辻野 純徳



もくじ
あとがき
著者略歴



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