本書を記するに当たって、筆者がとくに意をそそいだのは次に述べる諸点である。
@ 塗装の専門家ではない、建築設計者、建築施工管理者のための参考書として、理解しやすい、役立つ内容とする。
A これまでの建築塗装に関する出版物は、塗料が主体になっており、塗装に関しては必ずとも満足でないものが多かった。本書では、塗料の説明は極力押え、塗装施工側に視点をおいて、どのような点に注意すれば失敗が防げるかについて主力をそそいだ。
B 過去の技術の中には現在でも引き継いでゆかねばならない英知があると考え、「建築塗装の歴史」の紹介に1章をさいた。
C 塗布量、乾燥時間を守ることが塗装成功の出発点であり、管理のポイントであるので、塗装工程表にはこれらの条件を記した。
D 塗料・塗装・色彩についてどんな法規やどんな規格が制定されているか、案外知られていないので、調査の手がかりを得る資料として、これらを付録にまとめた。
なお、故障、失敗例については、筆紙やの体験を主としたが建築塗装のベテランである菅野元栄氏(関西ペイント)のお力添えも得た、また図表などについては既刊書から引用させていただいたものも多い。出典を記して謝意を表わしたい。
最後に、本書執筆の機会を与えていただいた、本建築技術選書の出版委員長である小林清氏、出版について多大のご支援をいただいた、(株)学芸出版社の京極〓宏社長、ならびに進行役を担当された同社編集部の前田裕資氏に対して、深くお礼を申しあげたい。
昭和61年6月
児島修二