まちづくりコーディネーター
まえがき 本書は、(財)京都市景観・まちづくりセンター(以下、「まちセン」)で活躍する現役の「まちづくりコーディネーター」たちと、そのOB・OGたちによって書き上げられたものである。 もともと「まちづくり実践入門」というタイトルで、まちづくりのテキストを出版することをめざしていたのだが、議論を重ねるうちに、「まちづくりコーディネーター」の役割の重要性が浮き彫りになってきた。しかも、これこそが「まちづくり」の本質を解き明かす鍵であることに気付かされた。これは、私はもとより、当のコーディネーターたちでさえも当初は予想していなかったことである。そこで急遽、このテーマを真正面に据えることにした。 では、「まちづくりコーディネーター」とは何をする人か。序章で詳しく述べるように、昨今、コミュニティ・レベルの「まちづくり」の重要性が認識されるようになってきた。ここでの主役は地域住民たちである。しかし、「まちづくり」を成功へと導くためには、地域が直面している問題を冷静に分析し、時には実態調査なども実施し、問題を解決するための道筋を描き出す作業が必要となる。「まちづくり」を生業としているわけではない地域住民たちだけでは、なかなか手に負えるものではない。そこで、このような作業をサポートしたり、時にはリードしたりするのが「まちづくりコーディネーター」である。参加や協働が当たり前のように言われる時代になったが、これを実効力のあるものとして社会に定着させていく上で、「まちづくりコーディネーター」の存在は欠かせない。 本書では、京都を舞台に、実践的に活躍している「まちづくりコーディネーター」たちの奮闘状況を紹介する。決して明るい話だけではない。悲喜こもごも。彼らの本音も吐露されている。 なぜここで、京都が舞台となるのか。その理由は2つある。京都は世界的に有名な歴史都市であり、観光名所も多く、華やかな側面を持っている。その一方で、あらゆる都市問題が集積している町でもある。町並みの破壊、少子高齢化に伴う福祉ニーズの増大、地場産業の衰退等、様々な都市問題が重層的かつ複雑に絡み合っている。「光」と「影」が表裏一体の関係を織り成す都市文化の典型例が京都なのである。したがって、京都で芽生えている「まちづくり」活動の成果(あるいは問題点)は、特殊解としてよりも、全国の多くの町にも参考となる一般解としての性格をより強く持つのである。これが第一の理由である。第二の理由としては、「まちセン」という優れた組織が存在していることがあげられる。「まちセン」は、全国的にみてもユニークな組織であるが、これも決して特殊解に止まるべきものではなく、むしろ、今後全国的に普及させてゆくべき組織モデルである。平成9(1997)年に創設されて以来、「まちづくりコーディネーター」を実践的に育成する取り組みを実施してきたことも、全国に普及させるべきモデル事例である。 「まちづくり」に必勝法があるわけではない。本書の事例から「まちづくりコーディネーター」の役割と技能を読みとって頂き、各地の「まちづくり」活動に生かしていただけるならば、われわれ執筆者としてはこのうえない喜びである。 なお、末筆ながら本書の執筆母胎である「まちづくり研究会」を開催する過程で、「まちセン」の全面的な協力をいただいた。ここに記して深甚なる謝意を表したい。また、各章の事例に登場する地域の住民のみなさん、関係者のみなさんにも謝意を表したい。
リム ボン
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