公共空間の活用と賑わいまちづくり
オープンカフェ/朝市/屋台/イベント

書 評

『新建築住宅特集』(叶V建築社) 2007.9
 本書では、公共空間の物理的な計画方法ではなく、主に利活用の実践事例を紹介している。欧米都市における実例、国内ではオープンカフェなどの「飲食利用」、屋台やマーケットなど「物販利用」、パフォーマンスなどその他の利用方法にカテゴライズし、26の事例を紹介。それぞれの取り組みの経緯や、運営方法、工夫、成果と今後の課題が、具体的な事実関係に基づいてまとめられている。「使う側が面白いことを提案すれば、いろいろな活性の仕方がある」という社会学者の毛利氏嘉孝氏の言葉(本号160頁)を実証している本といえよう。概論には、日本都市総合研究所の加藤源氏、政策研究大学院教授の篠原修氏が寄稿、本号特集と併せて読まれたし。

『環境緑化新聞』 2007.8.1
 魅力ある都市の姿とは如何なるものだろう。ただ整備された街なみに緑豊かな街路樹があるだけでは物足りない。その中心に人がいて賑わいがなければ死んだ街になってしまう。
 確かに、近年美しく整備された街路や公園、河岸などが増えてきた。しかしわが国では利用するのに制約が厳しく、魅力に乏しい公共空間が少なくない。こうした状況の改善をめざして官民さまざまな試みが増えてきているのも事実だ。
 本書は都市づくりパブリックデザインセンターの「都市における公共空間の利用研究会」の研究成果に全国の代表的な事例を加えたもの。諸外国における公共空間利用実態と制度等の把握を踏まえて、わが国の公共空間における賑わい利用の意義、方法、課題等を総括してある。第U部の「公共空間利活用実践の手引き」では想定される細かな項目まで検討が加えられており、実務者には有り難い。また巻末の関連年表や法令集も重宝する。
 それにしてもここに取り上げられた26事例は現行制度でも可能な取り組みが多々あることを示している。