書 評
『建築士』((社)日本建築士会連合会)2006.12
 公共空間などにみられるパブリックアートが建築やランドスケープにかかわる人に好意的ではない原因として、建築やランドスケープに係わる人とパブリックアートにたずさわる人のアートに対する捉え方の違いがあげられる。この違いに対する疑問から、本書を整理している。
 建築やランドスケープに係わるアートを、「モニュメントアート」「パブリックアート」「プラスアート」の三つで捉え直し、人物像や記念碑など、戦前から街なかに登場していた「モニュメントアート」。現在でも再開発事業などで多く見られる「パブリックアート」。そして建築やランドスケープに係わる人がイニシアティブをとるべき「プラスアート」という整理である。
 第1章では、三つの捉え方の役割や特徴などを事例をまじえ比較し、「プラスアート」のかたちを探っている。第2章では、「プラスアート」の機能を、七つに分類し、具体的な事例で整理している。最終の第3章では、「プラスアート」の導入の進め方をテーマに、導入に際してのポイントを整理し、事業者や設計者など計画する側からイニシアティブをとる知識や手法を紹介している。
 プラスアートの言葉そのもののネーミングは、「建築やランドスケープがめざす空間づくりをサポートする」「空間を利用する人々に豊かさを提供する」という意味を込めているらしいが、もっと積極的な意味でのネーミングであってもよいのかもしれない。
 しかし、著者の実体験をもとに書かれた本であり、豊富な写真による事例と七つのわかりやすくまとめたプラスアートの機能、具体的導入方法などは計画にたずさわる専門家には必見の書である。
(大嶌栄三)

『地方自治職員研修』(公職研)2006.8
 まちづくりとアートの関係は深い。人物像や記念碑など、戦前から街中に登場していた「モニュメントアート」。アーティストの自由な発想に任せ、しかし一方で全体的な調和とは無縁で、空間の切り売りともなりかねない存在である「パブリックアート」。それらに対する三つ目のアートとして筆者は、建築やランドスケープが目指す空間づくりをサポートする「プラスアート」の可能性を主張する。豊富な事例をもとに、プラスアートの機能と、具体的導入手法を紹介していく一冊。