鉄道でまちづくり


書 評
『地域開発』((財)日本地域開発センター)2005. 7
  本書は、交通、特に鉄道という切り口からまちづくりを論じたものである。8章から成るが、大きく3つの内容から構成されている。第1章から第3章では、都市形成における鉄道の役割について、近代都市の形成過程と鉄道の役割、通勤、モータリゼーションと中心市街地問題を取り上げている。第4章は観光と鉄道について。第5章から第7章ではターミナルに着目して、ターミナル自体の変貌、ターミナルを中心とした繁華街の構造から魅力的なまちづくりにまで話は及ぶ。第8章でも総括されているように、鉄道と自動車、中心市街地と郊外ショッピングセンターなどを公共領域と私的領域という観点から捉えた考察は興味深い。
  特定の読者層を想定しにくい図書である。逆に言えば、日頃通勤通学・買い物行動をしている全ての方々から、鉄道ファンやクルマ愛好家、さらにはまちづくりに携わる実務者まで、それぞれの関心・立場に応じた読み方ができるだろう。