中心市街地の空洞化問題は、当初、商業の郊外化との対比において語られることが多かった。次第に商業だけの問題ではなくなり、振り返ってみれば新たな公益施設の整備までが、郊外において行われた結果がもたらしたものであることに気づく。人々が集まって暮らす場として、長い年月をかけてつくりあげてきた中心市街地は、現状では人々の暮らしの中で縁の薄いものとなっている場合さえある。
地方都市の再生、なかでも中心市街地の活性化に向けては、関連法制度の整備など、国の省庁が連携してその対策に取り組み、地方自治体においても積極的に施策が打たれているものの、いまだその成果は途上にある。さらに前世紀末からのわが国経済の低迷、地球環境問題、少子高齢化社会の加速的進展等、関連する大きな社会変化が次々と起き、都市づくりは従来型の考え方を打破して、新たな展開を遂げる必要に迫られている。
特に地方都市の中心市街地においては、空洞化に伴い中小規模の空閑地が大量に発生しており、土地利用ニーズが少ないことから、多くは駐車場として利用されるにとどまっている。さらに近年では、かつての百貨店等、中心市街地の核的な施設が空き家化し空洞化を加速させるばかりか、取り壊しも困難なことから廃墟化した建物が放置されている例も多い。このような状況を黙視して良い訳はないのであるが、どのように利用したら良いかの指南書は少ない。
本書は、以上のような問題意識に基づき、平成13年度に「新たな都市空間需要検討会」が提起、整理した方向に基づき、有志執筆チームを組織して取りまとめたものである。
課題とした内容について取材等を進めるうち、中心市街地の今後のあり方に関しては、抜本的かつ大規模な対応というよりも、身近な情報に基づき、地域の工夫と努力が小さな成果を生み、その成果の上に次の成果を積み上げていくといった、身の丈に合っていて、かつ成果が目に見える方法に拠ることが有効なのではないか、との思いを一層強く持つに至っている。
本書は、既に地方都市の中心市街地において見られる新たな土地利用ニーズを具体例として把握し、その内容を紹介することに殆どのページを割いている。地方都市再生のための中心市街地の問題は幅広く深いものであり、たちどころに処方が見つかるようなものではないにせよ、多様な角度から問題を解こうとしていく試みは有効だと考える。中心市街地問題に携わっている方々に、一つでも有益な情報として役立てて頂ければ光栄である。
2004年2月
新たな都市空間需要検討会 執筆チーム
|