キッチンリフォーム成功塾

「見積り」のとり方から「クレーム」のつけ方まで

おわりに

 私の家は、二十数年前に、悪徳リフォーム業者にかかって、ひどい目に遭いました。キッチンの床下地が古くて根太も弱っていたのに、業者は、交換や補強をまったくしないで、そのままクッションフロアを貼ってしまいました。どうなったかというと、2年もしない間に、木の床組みが腐ってしまい、まっすぐ歩けないほど床があちこちへこんでしまいました。
  主人の両親は、その時は二人で住んでいたのですが、高齢でリフォームのことなどほとんど何も知らないし、自分達の依頼した業者が悪徳業者などとは夢にも思わず、業者に言われるままに追加に追加を重ねて、最終的には、2千万円近い高額リフォームになってしまいました。その業者から見れば、本当に「いいかも」だったに違いありません。業者は、何食わぬ顔で安材料を使い、徹底的に手抜き工事をしました。
  たとえば、どこの家でも風呂のドアは中から鍵がかかるようになっています。でも、ウチの場合は、逆なのです。外からしか鍵がかかりません。多分、業者の倉庫にあった勝手違いのドアを無理やり取り付けたものだからです。風呂の窓は外壁側ではなく、隣接する小屋側に取り付けられました。
  しばらくすると、小屋の天井が風呂からの湿気でぼろぼろになってしまいました。また、壁という壁に断熱材がまったく入っていないため、信じられないでしょうが冬の外気温と室内温度がほとんど同じというような状況で、まるでキャンプ生活でした。しばらくすると次から次へと様々な問題が湧出してきました。しかし、その業者に文句を言いたくても、工事を請け負った会社は、その後すぐに倒産してしまいました。
  そのような目に遭えば、誰でも業者不信になります。下手でも自分たちで工事をする方がよほどましだと思うようになりました。その時はまったくの素人でしたが、何とか自分たちで、キッチンの床を直そうと試みました。その時に、「もう少し技術があれば、もっときれいに家を直すことができるのに」と心からそう思いました。
  このことがきっかけで、建築関係の仕事をしてみたいと思うようになり、システムキッチンやユニットバスを組む仕事を始めました。私たちは、もう十分自分の家を自分で直せますので、悪徳リフォーム業者に騙されることもないし、悪徳までは行かないけれど巷に溢れるいい加減な業者の口車に乗せられることもありません。でも、その可能性のある多くの人たちに、私たちのような目には遭って欲しくないとの思いからこの本を書きました。
  リフォームで成功するには、何よりもまず、仕事を大切にする業者を選ぶことです。自分の仕事を大切にする人は、めったなことでは手を抜きませんから。そして、ベテランで信頼の置ける人に担当や監督になってもらうことです。そのような人は、何でもよく知っていますから、大きな間違いをされることは恐らくありません。
  この二つを間違えなければ、もうリフォームは、8割方成功したようなものです。上手な交渉術で、業者に伝えるべきところはしっかり伝えてください。そして、同時に業者とよい関係を築ける施主になれば、後の2割も楽勝です。
  素敵なキッチンリフォームを目指して頑張ってください。

 最後になりましたがこの出版に際し、学芸出版社の村田譲、越智和子両氏には、多くのご助言を頂きました。この紙面をお借りしてお礼申し上げます。

平成19年8月吉日
福持 礼子