和風建築の技能は、師匠から弟子へ、口伝と実働によって継承され、記録としては僅に、簡単な木版摺の図か、寸法録しか遺されていない。従って、技能の神髄を求めようとすれば、保存されている数少ない建物によるか、補助的に伝説や物語の中から、各自が濾過して察知するほかは無い。その意味で、その一端として、この和風建築に関する六〇話を、諸賢の御参考にと、記述した次第である。