歴史・文化のまちづくりニュース NO.15
発行・歴史・文化のまちづくり研究会
発行日 1999年8月18日
文京区本郷4-1-7-3F(エコプラン内)
03-3814-2930(電話)
03-3814-3594(ファクス)
●日本勧業銀行本店(設計:妻木頼黄)の別棟を発見!
第一勧業銀行碑文谷総合グランド(目黒区)のクラブハウスとともに保存・活用のための要望書を提出!
日本勧業銀行本店(妻木頼黄設計)の別棟を発見!
歴史・文化のまちづくり研究会では、日本勧業銀行本店(明治32年建設)の別棟を発見しました。
所在地は、目黒区の第一勧業銀行の碑文谷総合グランドの南西の角にあります。
そして現在なお、気品のある姿を保っています。その存在は、第一勧業銀行の行内誌「かんぎん」の昭和32年の4月号にも移設された記事が掲載されており明らかです。
調べによると、日本勧業銀行の本店と共に、内幸町に建設されたのですが、日本勧業銀行の1号店として、記念館として移築・保存されたとのことです。
本店は、新館が出来た後は、千葉市役所として使われ、さらにその後は、千葉トヨペットの本社として現在も使われています。屋根の形などは当時の本店の意匠とは変わってしまいましたが、1997年に登録文化財となりました。
妻木頼黄は明治初期の我が国の代表的な建築家で、日本勧業銀行本店は、洋風建築が多い妻木の作品の中では珍しい和風のデザインで、当時話題となった作品で、現在この地に移転され、管理事務所となっています。東京での妻木の作品には日本橋があります。
区ではグランドを購入予定、解体がせまり、保存・活用の要望書を提出、重要文化財の可能性!
目黒区ではこのグランドを購入の予定です。公園としての利用を考えており、購入の前提条件としては、更地にすることのようです。当グランドには、クラブハウスもあります。 そこで、建物の所有者は9月からは解体に入る予定とのことです。
歴史・文化のまちづくり研究会では、クラブハウスと共に、管理事務所も保存し、活用するように、目黒区長、及び教育長宛に、7月30日に要望書を提出しました。
東京大学教授鈴木博之氏によると、重要文化財の可能性もあるとのことで、今後詳細な調査も必要と考えられます。
当会では継続的に対応していきたいと思いますが、区民や建築関係者の声もお聞かせいただければと思います。
見学会開催のお知らせ
当会では、今後見ることのできない可能性もあるクラブハウスと管理事務所の見学会を開催することにしました。所有者のご協力で開催します。日時と集合場所は以下のとおりです。希望者は電話で当会へお申し込み下さい。
・日時:8月28日(土)10:30〜12:00
・集合場所:第一勧銀碑文谷グランド体育館前
●「第5回歴史・文化のまちづくりセミナー」が開催されました
7月17日(土)13:15pmから、東京大学工学部1号館15号教室で『歴史ある建物の活かし方』の出版記念セミナーが開催されました。セミナーの参加者は115名でした。
またセミナー終了後、西片のフランス風レストラン「ル・リス・ダン・ラ・バレ」で懇親会が開催されました。懇親会の参加者は55名でした。
1.第一部「歴史ある建物の活かし方」
始めに、著者による解説がありました。三船康道氏(エコプラン)からは、「一般建物と文化財の活用」と題して全般的な解説があり、続いて、文化財の活用を行政としてリードしてこられた文化庁の清水真一氏から「文化財の活用の考え方」と題して解説があり、さらに同じく文化庁の大和智氏からは「文化財活用のノウハウ」と題して解説がありました。
次に梅津章子氏(東京大学大学院)からは、「アメリカにおけるアダプティヴユース」と題して最新のアメリカの動向を紹介していただきました。
2.第二部「建物見学:東京大学1号館」
第二部として、駒田剛司氏(駒田設計事務所)には、東京大学の助手時代に担当した、当建物(東京大学1号館)の活用についての考え方を解説していただき、同氏の案内で館内の見学会を行いました。
3.第三部「歴史ある建物の活用報告」
休憩の後、歴史ある建物を修復し店舗等に活用されている皆様から、実践報告をいただきました。村守恵子氏(ギャラリー・エフ:登録文化財)からは「江戸時代の蔵を保存し活用する」と題して、小池邦夫(鳳明館)からは、明治時代からの下宿屋を改装し「こだわりを持った和風旅館」として営業されている様子を、また、高須治雄氏(はん亭:登録文化財)からは、明治後期から建てられた商家を買い取り串揚げ屋として転用された経緯を「はん亭物語」として、そして有馬涼子氏(ル・リス・ダン・ラ・バレ)からは「愛する家をレストランに」と題してお話をいただきました。
そして、住宅金融公庫の菅沼康雄氏からは、今年度からできた「歴史的建造物のリフォーム融資制度」についての解説をしていただきました。
最後にまとめとして、大河直躬氏(千葉大学名誉教授)からは「これからの活用に向けて」と題して講演をしていただきました。
4.懇親会
会場を移動し5:45pmから懇親会が開催されました。「ル・リス・ダン・ラ・バレ」は明治43年に建設された外観は和風で内部は洋風の住宅を改造したレストランです。
参加者はレストランに転用された内部空間を堪能しました。また有馬さんご自身の歌もあり、盛り上がった懇親会となりました。リビングルームを改装した待合いや、サンルームを活かした店内は、歴史ある建物の再利用の意義を私達に実感として教えてくれる良い機会をなりました。
今回のセミナーは、会場の東京大学1号館も、歴史ある建物を活かし続けている例で、参加者にはまたとないよい機会となりました。
(報告:上原英克)
●この記録はホームページに掲載されています。
●「蒼梧記念館と光風亭見学会」が開催されました
前号のニュースでお知らせした見学会が、8月7日(土)10:30から行われました。
今回の見学会も前回の林愛作邸同様、一般に公開されていないため、地元世田谷区をはじめ、歴史的建築に興味を持つ方々の参加がありました。当日は来られなくなった方も多く16名の参加でした。
1.蒼梧記念館
蒼梧記念館は、第一生命保険相互会社の創始者、故矢野恒太の旧宅です。昭和2年竣工から、大田区田園調布にありましたが、翁没後は、蒼梧記念館として保存され、昭和61年、この地に移築が完了しました。設計は松本与作氏、施工は石井正作氏です。この建物は大正末期の住宅建築、特に日本建築と西洋建築を融合させた代表的な一例として評価されています。
また、建築について一家言を持っていた翁が、当時としては、人並みでない工夫を思うとおりに実現した建物としても記念になるものです。
給湯、暖房設備はもちろんのこと、客間に設置されたレンズ付きの覗き窓(車寄せを見る)、各室に通風装置、上下階連絡のための通話管、手動のリフト(1階台所から2階客間へ)等どれも現代住宅を先取りりする創意工夫であり驚きの連続でした。参加者は食い入るような目で見学しました。
2.光風亭
隣接する光風亭(旧馬場烏山別邸)は、吉田鉄郎設計の鉄筋コンクリート造のスッキリした近代建築です。日本のモダンデザイン、表現派の最盛期に活躍した建建築家で、東京中央郵便局、大阪中央郵便局等の現存する建築にそのデザインを確認できます。芝生の庭から見るスッキリした外観には皆感動しました。
見学の後、クラブハウスでの語らいでは、吉田鉄郎に詳しい観音克平氏などの話も聞くことができ、意義のある見学会となりました。終わりに、案内していただいた、施設管理の尾形さんには、細かい説明などもしていただき、紙面上ではありますがお礼を申し上げたいと思います。次回の見学会も期待しましょう。
(報告:渡辺勝雄)
●コラム
ル・リス・ダン・ラ・バレ−西片のフランス風レストラン−
「ル・リス・ダン・ラ・バレ」は、良好な住宅地西片にあるフランス風レストランです。
明治43年、桜井省三邸として建設された。外観は和風であるが、内部は板張りなどのように洋風のつくりとなっている。
桜井は工学博士であったが、「仏蘭西式料理の理論と応用」という本を出版したようにフランス料理に造詣が深く、この自宅で料理教室まで開いた。
昭和40年代後半より有馬氏が住むようになった。平成に入りフランス料理に関心を持ち、有馬氏は住宅をレストランに模様替えし、平成3年2月19日にオープンした。
店の名前は「谷間の百合」という意味である。ここでは食事ばかりではなく、各種のコンサートやフラメンコなどのダンスの催し物もあり、ゆったりとした食事とともに楽しむことができる。コラムの写真は、「第5回歴史・文化のまちづくりセミナー」の懇親会の様子である。
(報告:三船康道)
住 所:文京区西片2−7−15
建築年:明治43年
構造等:木造2階建て
営 業:昼:12:00より、夜18:00より、日曜休
TEL:03-5684-0770
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