図解住まいの寸法
暮らしから考える設計のポイント

はじめに

 お客様や工務店などからプランニングを依頼される際、多くがリビング・ダイニング20畳、主寝室10畳+ウォークインクローゼット、和室6帖など、プランに含める部屋の種類と広さでリクエストされます。お客様がその部屋ですること、したいことも十分わからない中で、多くの設計者はそれを実現すべく苦慮するわけですが、それで出来上がった家はお客様にとって満足のいく家となるのでしょうか?
 日本人は、家族全員が和室(茶の間)で寛ぎ、食事をして、就寝する際はテーブルを畳んで布団を敷くというスタイルで長く生活してきました。現在では、洋風化が進み、リビングで寛ぎ、ダイニングで食事をし、寝室で就寝するなど、機能が分かれて多くの部屋が必要となってきましたが、ここで考えないといけないことは、ダイニングは食事だけの空間ではないということです。洗面室は洗濯機と洗面台を置くだけでは満足のいく空間にならないということです。
 又、浴槽やキッチンの大きさは家族数や住宅規模の大小で、さほど変わらなくても、30坪と60坪の家の玄関が同じ広さでは違和感があります。生活行為が支障なく行えるだけでなく、住宅の規模に対して個々の空間をバランスよく設計することも重要です。
 本書では、住宅を13の空間に分けて、それぞれの空間が持つ機能と要素を整理した上で、その空間内で行われる生活行為に対して、支障のない空間寸法を理解しやすくまとめています。又、安全や高齢者対応、プライバシー、採光換気、収納などの観点から配慮すべき寸法についても、住宅の品質確保の促進等に関する法律で定められた、住宅性能評価の規定等を例に詳しく説明しています。住まいやすさ実現のための寸法の基準書として、本書をご活用いただけると幸いです。