写真マンガでわかる 工務店のクレーム対応術


はじめに

 日本国内では、世界でも類をみないスピードで少子高齢化が進んでいます。その結果として、住宅を新築しようとする需要が減少しています。2014年には、既に空き家戸数は、全住宅の13.5%にあたる820万戸と、過去最多を更新しています。建物の質は別として、量は充分に余っているのです。住宅を建てようとする人が、過去のように大きく増えることはありません。
 工務店の立場からすると、今後は一人ひとりの建築主の重要性がより高まることになります。建築主に満足を与え、クレームによる損害を防ぐとともに、良好な関係を継続することが重要となります。場合によっては、紹介受注の可能性もあります。過去に縁あって建築した建物のメンテナンスを責任をもって継続していくことは、建築主に対する工務店としての責務です。
 住宅現場では、建築主の知識不足や工務店側の説明不足、建築主の気持ちへの配慮不足、建築主の要求内容の確認不足などによるクレームが発生しています。
 品質管理の行き届いた工場製品と異なり、住宅建設に使う材料は、農林産物である木材や、湿式材料であるコンクリート・モルタルといった、乾燥収縮を伴う特性をもつものです。職方による現場施工となると、人によるバラツキもあります。つまり建築現場では、若干の不具合は必ず存在するものと言えます。材料にも誤差があり、施工にも誤差があります。大半の不具合は補修することが可能ですが、事前の説明によって建築主に理解してもらうべきところもあるかと思います。
 屋外単品受注生産である住宅産業は、昔から“クレーム産業”と呼ばれてきました。建物に実際に住んでみて初めてわかることも多いので、クレームは起きるのが普通です。
 工務店の工事管理者や各職方が同じレベルの建物品質、同じレベルの建築主対応をしても、建築主が大変満足する場合もあれば、逆に大変不満に思う場合もあります。この点が難しいところです。
 一言で言えば、コミュニケーション不足です。コミュニケーションがあれば、問題点の早期発見につながり、対応方法もあります。人と人の問題ですから、バラツキがあり、まったく同じ場合はありません。
 多くの建築現場を掛け持ちする工務店側の工事管理者にとっては、その現場はあくまでも多数の現場の内の一つであり、自分の家がすべてである建築主とは温度差があります。この温度差が、クレームに大きく影響します。住宅は、メンテナンスを繰り返すことにより、半永久的にもたせることが可能です。メンテナンスを継続するためには、建築主と工務店は良好な関係を継続する必要があります。主導するのはプロである工務店でなければなりませんが、建築主側にも努力が必要です。建築主が工務店を気に入らないという理由で、簡単に交代させるべきものではありません。
 クレームは、調停や裁判といった争いになる前に解決したいものです。建築主からのクレームを減らす対応、次に、起こってしまったクレームを解決するための対応を考えます。建築主への対応はどうあるべきか、事例を含めて解説していきます。現場はすべて異なり、人もすべて異なるため、個別事例をそのまま適用することはできませんが、解決のヒントになると思います。