成熟のための都市再生


はじめに

 「エクステリア」という言葉が一般的に認知されたのは、ここ15〜20年ぐらい前からだと思われます。それまでは、エクステリアという言葉自体があまり使われることもなく、単に「外構=外を構える」とか「外柵=外を囲う、柵をする」という意味合いのものにすぎず、建築業界の一部で認知されていた程度でした。
  エクステリアという言葉は元来「インテリア」の対語としての意味合いがあり、住環境という視点でとらえれば、建物内部に対して外部の住環境ということになりますが、どちらかといえば、建物内部と外部住環境に対する考え方は、一般生活者にとってもかなり温度差がありました。建築関連出版物等の情報量に対して、エクステリア関連の情報ははるかに少ないというか、ほとんどなかった状況のなかで、建物ほどのこだわりもなく、「予算の範囲内でおまかせします…」という建築主がほとんどだったといえます。
  また、外部空間は一般的には「庭」という概念の空間があり、エクステリアとは一線を画していたともいえます。
  エクステリアの流れ、考え方の推移については後で詳しく述べますが、大きな転機として考えられるのが「庭」の概念が単に「鑑賞する庭」だったのが、生活者が個々のライフスタイルに応じて「使う庭、介在する庭」という考え方を持つ人が増えてきているということです。庭に対する考え方、視点が変わることにより、エクステリアに対しても以前とは異なる見方、考え方が生まれてきたといえます。
  ふり返れば、エクステリア工事(外構工事)を専業とする業者及び関連メーカーが出現し始めたのは1970年代前半くらいであり、それまでは、建築業の一環として門や塀の工事がなされていました。そこには建築からの流れによるデザイン性、材料の選択、品質等に対する技術的な裏付けも確保されていました。1970年代後半になり、日本経済の高度成長に伴う新設住宅着工件数の大幅な増加のなか、建築本体と門や塀の外構工事の分離が始まり、さまざまな業界からの新規参入も含め、エクステリア業界の形成、拡大につながったといえます。
  また、最近の建築主は建物、門や塀、庭という空間を個々に考えるのではなく、敷地全体のトータル的な住環境として考える傾向が強くなってきています。
  しかし、建築・土木工事業を源とするエクステリア業界、公園・緑地工事などの官需から個人庭園工事に携わってきた造園業界、ガーデニング、草花等を中心とした園芸業界、その他建築に関連する業界や異業種からの参入も含め、さまざまな出身母体を持つ人達が建物の外部住環境づくりに携わっているのが現状です。
  言い換えれば、エクステリア業に携わる技術者には建築、土木、植物を三つの軸とした広範な知識が必要であり、その基礎知識に裏付けされたデザインの考え方、現場における安全性、品質の確保という技術者としての姿が求められているといえます。建築にとても似つかわしくないエクステリアデザインから始まり、建築基準法など関連法規の理解不足、ブロック基礎から鉄筋、コンクリート工事などの施工品質不備及び安全面の軽視、樹木の耐性(抵抗力)・特性を無視した植栽他などが、知識のないままなのか? 競合業者とのコスト対応なのか? いろいろ理由があるかもしれませんが、不具合現場、またはそれに類する現場が多いのも現実といえます。
  エクステリア業界が生まれて約35年、一般生活者が工事内容等についてもインターネット、各種雑誌などからさまざまな情報を得られるようになった状況のなか、よりプロとしての専門知識に裏付けされた対応が求められるのはいうまでもありません。
  建築・土木・植物という各分野での専門書は多数ありますし、一般的なガーデン雑誌、エクステリア雑誌も最近は増えていますが、これら広範囲な部分をエクステリアという視点で、体系的に整理された専門書はいまだ皆無といえます。
  本書が住宅エクステリアに携わる多くの人達や、エクステリア工事を考えておられる一般の人達の、失敗しないエクステリア計画の考え方の一助になればと思います。