一級建築士設計製図試験 わかるエスキース 2010


はじめに ── あなたが求めているものは何ですか?


一級建築士設計製図試験(以下製図試験)に合格したいという気持ちで、拙著を開いた受験生の皆さん。あなたは何を求めてこのテキストを開いたのでしょうか。

もちろん、合格するノウハウを身につけたいからであり、また身についてないという自覚のもとにページをめくり始めたのだと思います。

では合格するノウハウとは一体何なのでしょう? たしかに課題文の読み方や答案図面の描き方に製図試験用のテクニックはあります。そういうテクニックも必要であることは間違いありませんが、それらを全て身につければ合格できるものなのでしょうか。

そして、そういったテクニックを全て身につけた暁に一級建築士になることが本当にあなたの求めていることなのでしょうか。

私たち学科製図.comは、製図試験に挑戦する過程で得られる知識やテクニックも大切だとは考えていますが、新たな課題やテーマについて、短期間でその要点を理解し習得していく能力を身につけることが、より重要であると考えています。

建築士は、どのような条件を提示されても、その中での最適解を「設計」という形で表現することがその職能として求められます。そういった意味で受験テクニックのようなものを超えて、ある課題についてケーススタディワークを行い、その答えを短期間で導き出す能力がより本質的に必要なのです。

平成21年から製図試験は制度自体が大きく変わりましたが、試験に合格するノウハウだけを追いかけている受験生は制度に振り回されることになるでしょう。しかし、制度がどれだけ変わろうとも、建築が根本から変わってしまうことはありません。変わっていく制度の中にあって、変わらない建築の根本を見つめていく力をつけることこそが、最も求められている建築士像なのではないかと思います。

そのための最も重要なツールがエスキースに他なりません。

非常に逆説的ですが、製図試験対策用のエスキースを徹底的に突き詰めていくことで、より建築的な能力が磨かれていくと考えています。

短期間で問題点を解決する能力を持つ一級建築士像を根底に据えつつ、その練習台として、シミュレーションとして「製図試験」に立ち向かい、合格を勝ち取れるようになることを願っています。

製図試験の向こうへ。