みんなでつくる総合計画

高知県佐川町流ソーシャルデザイン

おわりに

 「総合計画を住民と一緒につくりたいんです」。
 堀見町長が忙しい公務の合間をぬって、わざわざ会いに来てくれたのは2013年12月26日のことでした。2時間ほど彼の想いと構想を聞いているうちに、私も「チームさかわ」の一員として、このプロジェクトに参加したいと強く思うようになりました。
 佐川町長の堀見和道氏。論理的思考力、リーダーシップ、プレゼンテーション能力……、優れた点が多々ありますが、彼の最大の能力は「人の能力を引き出す力」であると、常々感じます。彼が町長就任以来の2年半で、このまちから新しい動きがどんどんはじまっています。

・ 自伐型林業への先進的な取り組みがはじまり、全国各地の自治体から注目を集める。林業従事の移住希望者も毎年続々と佐川町に
・ 地方創生の先行事例として内閣府より選ばれ、高知県内一、全国の市町村でもトップレベルの交付金を獲得
・ デザインとプログラミングを学ぶ授業「佐川ロボット動物園」が開始
・ 離島経済新聞社の「うみやまかわ新聞」を尾川小学校5・6年生が制作
・ 農林業×デジタル×デザイン拠点「さかわものづくり大学」開校
・ 町内福祉事業所で製造したオリジナル商品「WriteMore : 勉強したくなる机」がグッドデザイン賞、カンヌライオンズ(仏)ほか、を受賞
・ 佐川町出身の植物学者・牧野富太郎氏ゆかりの牧野公園の整備、桜の名所としての再生が進む

 何よりも佐川町役場職員と住民のみなさんの表情が変わってきました。役場は活気に溢れ、まちのあちこちで地域の未来を語る場が催され、全国から人材が集まりつつあります。
 こうしたまちの変革は、町長一人で成し遂げたものではありません。住民のみなさんや役場職員一人ひとりが主役となり実行したもの、町外の専門家の力を借りて住民とともにつくりあげたものばかりです。まちに必要な人材を発掘し、人の長所を見極め、能力を引き出し、支援を惜しまない。そんな新しいタイプのリーダーである堀見町長のもと、このまちからは今後も新しいアクションが続々と生まれるでしょう。

 高知県佐川町。まだまだ全国的には知名度は低く、多くの方は「さがわ」と読んでしまうでしょう。正しくは「さかわ」です。ぜひ憶えておいてください。10年後には日本中から注目を集める自治体になっているはずです。
 最後に、この本の執筆には大変多くの方に、お世話になりました。多田智美氏、永江大氏の編集・執筆、水内智英氏、仲村健太郎氏のデザインのおかげで、まちの未来像が誰にとってもわかりやすく、魅力的なカタチで表現されました。
 19名の審議会メンバーのみなさんには、新しい取り組みを温かく見守ってくださり、前向きな意見ばかりをいただき、大変感謝しております。チーム佐川推進課課長である片岡雄司氏を筆頭に、廣田春秋氏、田村浩志氏ほか、佐川町役場・チーム佐川推進課のみなさん、26名の役場コアメンバーのみなさん、および白木彩智氏ほかissue+designのメンバーは、何度も議論し、時には衝突し、怒り、泣きながら、2年間にわたるプロジェクトの運営、お疲れさまでした。
 353名の住民ワークショップメンバー、458名の住民アンケートメンバー、112名のオール役場職員、みなさんの献身的な関わりなしでは、この総合計画は完成しませんでした。事務局を代表して厚く御礼を申し上げます。
 これから10年間かけて、本書で描いた未来像を実現しましょう。「みんなが主役」のまちづくりがこれからはじまります。

issue+design 代表/佐川町クリエイティブディレクター
筧 裕介