リノベーションまちづくり
不動産事業でまちを再生する方法

はじめに

 人口減少、高齢化、中心市街地の空洞化、増え続ける空き家、自治体の財政破綻、コミュニティ崩壊、世の中がどんどん悪くなってしまうのではないかと懸念される方も多いと思います。実は、私は今あるものを使って創造的にまちを変えていけば、もっと楽しく暮らせる世の中にしていけるのではないかと考えています。ピンチはチャンスです。

 『リノベーションまちづくり』は、 大都市、中核都市、小都市内に増大し続けている遊休化した不動産という空間資源をリノベーションして、都市・地域経営課題を解決する方法を書いたものです。すなわち、今あるものを使って、停滞している、衰退しているまちに変化を生み出すプロセスをどうつくり出していくか。自分のまちが手の付けようがないような状態であっても、自分たちの考え方次第、工夫次第でもっと暮らしやすく、もっと楽しいまちになる、自分たちの手でそれをやっていくんだ、そんなプロセスをつくっていくことを記したものです。

 リノベーションとは、リフォームと違ってただ元通りの新しい状態に戻す行為ではありません。リノベーションは、遊休不動産などの空間資源をイノベイティブな新しい使い方で積極的に活用することにより、まちに変化を生み出すことを言います。
 縮退する都市・地域には様々な都市・地域経営課題が存在します。中でも、産業の疲弊は地域を衰退させる主要因と考えられます。産業が疲弊すると生活が成り立たず、人が住めなくなるからです。
 また、自治体の財政難という大きな課題が重くのしかかってきています。そう考えると民間主導の自立型地域再生が必要になってきている、すでにその時代を迎えていると感じるのは自然なことかもしれません。
 本書の中身は、私自身が地域再生の現場に入って実施したプロジェクトの体験をもとにして地域を再生するノウハウを紡ぎ出したものです。
 衰退している地域に変化を生み出すプロセスをどう構築していったらよいか、そして地域がどのように再生していったらよいか、次世代、次々世代までも継続する地域にどうやってしていくかをこの本から体得してもらえたら幸いです。

 リノベーションまちづくりは、決して難しくありません。やり方の手順、段取りを1段ずつしっかりと組んでいけば、必ず道が開けていきます。先が少しずつ見えてきます。そして、気づくと共に歩む仲間が傍らに増えています。
 そのためには、これまでの常識を捨て去ることが大切です。道元の言葉で「放てば手に満てり」という言葉があります。今までの考え方やこだわりを捨て、自分自身が現実の社会に真っ正面から向き合って考え行動することが大切です。どんな小さなことと思えることでも、その小さなことからやってみること、そしてその結果をよく観察し、次のステップに進んでいくこと、これが大事です。

 リノベーションまちづくり、楽しいですよ。

清水義次