地方から政治を変える
未来政治塾講義U

おわりに


 2013年4月、未来政治塾は2期目の学生を迎えました。1年目の講義では、地方から光をあてる若手政治家と政策改革者の力強いメッセージにより、多くの塾生が政治への参加意欲を高めました。
 日本では核家族化が進み、家族の絆が失われつつあることが課題と言われる1方で、育児や介護の問題では、旧来のしがらみが重くのしかかっている面もあるように思います。日本社会では、適度な距離感を保ちながら自らが選択をして、子育てや介護と仕事を両立させていく、そのバランスがとりにくいのです。これは、自己犠牲を美化する日本人の、旧来の家族観の負の部分なのではないでしょうか。今、私たちに突きつけられているのは、どうすれば自分や相手が主体的に選択をし、お互いに納得できる最善の方法をとれるのか、ということです。
 北欧では、子どもが小さなころから「自分で選択すること」を学ぶと言われています。北欧の教育といえば、1990年代に、皇太子殿下がスウェーデンの社会科の教科書を紹介されたことがあり、私も関心を持ちました。この教科書の優れているところは、たとえば「学校の先生の給料は誰が払っているの?」「裁判はどういうときに成り立つの」といった、現実に社会で起こっているしくみについて、生徒が考えながら学んでいける点です。
 日本では、小学校時代から自分で考えて、他者に意思表示をして意見を聞いて、最後に自分が選ぶという教育が十分に行われていません。これまで日本では、教育の中で政治について語ることがタブー視されてきました。たしかに、戦前の軍国主義教育が国民を戦争に駆り立てたことはあったかもしれません。しかし戦後60年間、あまりにも教育が政治をタブー視したがゆえに、日常の中で政治がどれだけ影響を持っているか、投票者として自分の1票がどういう意味を持っているかということを、子どもたちに伝える場面が失われてしまいました。
 未来政治塾では、政治を「遠い」ものから「近い」ものにするという理念を掲げて勉強してきました。政治がいかに私たちの生活の足元をつくっているかということを発信し、今後も遠い政治を近くにする努力を続けていきたいと思います。
 未来政治塾の趣旨にご賛同いただき、ご多忙のなか講師をお引き受けいただきました講師の皆さまに心から感謝申し上げます。また、この塾の運営を支えてくださった事務局の塚本茂樹さん、駒井千代さん、小川泰江さん、松田馨さん、野田武宏さん、竹内ひとみさんはじめ、多くのボランティアスタッフの方々にも厚く御礼申し上げます。

2013年4月14日 長浜曳山まつり、日吉山王まつりの日に
未来政治塾塾長、滋賀県知事 嘉田由紀子