僕ら地域おこし協力隊
未来と社会に夢をもつ

まえがき


 「『あんたたちの活動で地域が変わってきた』と言われるのが、何よりうれしい」「『ここに住んでくれて、ありがとう』と言われて思わず涙が出た」と話す顔は、生き生きと輝いている。
 山間地や離島・半島などの過疎地に移住し、地域に役立つ仕事をしながら田舎暮らしを実現しようとしている人たちがいる。テレビドラマ『遅咲きのヒマワリ』で主人公(生田斗真)が演じた地域おこし協力隊の人たちである。
 私は、彼らを全国に訪ね歩き、生の声を聞き、活動の様子を追った。
 彼らの多くは、元は普通の会社のサラリーマンだったり、地域活動に興味を持っている卒業したての若者だ。素人に何ができる!?と思われるかもしれない。
 だが、訪ね歩いた多くの地域で、地元の人も、行政の人も彼らの力を実感されていた。
 彼らのなかには、地域資源を掘り起こし、宝に変えて様々な新しい事業を生み出している若い女子大卒業生や、バックホーを操る林業女子もいた。60代の方もいれば、家族とともにやってきて異色の行動で地域に旋風を巻き起こしている元広告マンもいた。ほんとうに多様な人たちが、さまざまあり方で地域に関わっていた。
 いずれも池に小石を投げ込んだように、最初は小さな波が起きたにすぎなかったが、徐々に地域に波紋が広がり、いまでは地域を変える大きなうねりになっている。協力隊の努力・小さな成功の積み重ねに、地域の人たちが呼応したのだ。
 もちろん、地域になじめず、思い通りにいかなくて壁の前で苦悩している人たちもいるが、それを乗り越えようとする努力は、きっと先々の人生に貴重な体験となるだろう。
 いま、多くの都市生活者がグローバルな競争社会に疲れている。また豊かな自然環境のなかでの暮らしに興味を持ち移住を考えている人たちもいる。
 一方、地方では高齢化・人口減少に伴う担い手不足、地域力の低下に悩んでおり、次代を担う若者や事業経験、スキルを持ったエキスパートの受け入れは緊急の課題にもなっている。
 こうした双方が持つ課題にマッチングした事業として協力隊への関心が高まっている。
 地域おこし協力隊は09年から始まった総務省の事業だ。都市部の人を受け入れ、最大3年間を期限として報酬を支払い、家賃などの補助を行う。総務省のアンケート調査では、昨年度任期を終了した人たちの7割近くが地域に定住しているそうだ。
 田舎暮らしや地域での仕事に興味のある人、地域再生に関心のある方は、ぜひ本書をお読みいただき、参考にしていただければ幸いだ。

2012年11月5日 矢崎栄司