風景の思想



 はしがき 西村幸夫

第1部 日本人の風景の思想


第1章 風景の中世史 身近な風景と身体 五味文彦

 1 中世都市の風景の類型
 2 都市京都の風景の誕生
 3 風景と身体
 4 中世都市の風景の展開
 5 都市の衰退と復活

第2章 広重に見る江戸の都市イメージ〜武蔵野図の残像 大久保純一

 1 描かれた都市のイメージ
 2 江戸の都市イメージ
 3 広重の見た江戸の町
 4 武蔵野図の残像

第3章 風景のフォークロア〜街角に残る巨木と都市の記憶 伊藤廣之

 1 街角の巨木
 2 永代浜とクスノキ
 3 クスノキの思い出
 4 第二次大戦後の街の変遷とクスノキ
 5 「心の中の風景」とその構造
 6 巨木のある風景


第2部 場所の風景とその思想


第4章 郊外の風景〜文明・文化の表象としての生活像 中島直人

 1 文明の表象―コスモスとしての風景
 2 文化の表象―郊外生活文化の風景
 3 設計の陥穽―郊外化の風景
 4 記憶の蓄積からの展望―郊外の風景のこれから

第5章 地方の中心商店街と中山間地域の風景〜暮らしの風景とは何か、現状と今後 温井 亨

 1 両者の風景の特徴
 2 暮らしの風景の現状を事例から見る

第6章 農と風景 〜風景としての百姓仕事の発見 宇根 豊

 1 風景が見えない
 2 風景の発見
 3 内側からの眺めである「様子」と、外側からの眺めである「風景」
 4 風景と景観のちがい
 5 様子の中に仕事を見つける
 6  仕事を「風景」として表現する

第7章 都市計画における風景の思想〜百景的都市計画試論 西村幸夫

 1 眺めるものとしての「都市風景」から操作対象としての「都市景観」への移行
 2 二〇世紀初頭における都市計画の出現と都市風景意識の後退
 3 都市風景をとりもどす新しい都市計画の試み
 4 建築物からなる都市計画とインフラからなる都市計画を結ぶもの
 5 共有されたイメージとしての都市風景
 6 賑わいが醸し出すものとしての都市風景
 7 百景的都市計画のこころみ


第3部 風景づくりの実践とその思想


第8章 文化的景観と風景〜生活・生業の風景の持続と継承 井上典子

 1 文化的景観保護制度
 2 文化的景観の役割
 3 文化的景観における保存と活用

第9章 河川風景の思想〜自然と人為が織り成す風景 島谷幸宏

 1 個性的な河川の風景
 2 システムとしての河川の風景
 3 人の暮らしが作る風景─洪水のリスクと水の恵み
 4 河川整備の技術と思想と風景

第10章 身近な自然と風景〜里地里山の再生による風景づくり 深町加津枝

 1 里地里山とは
 2 里地里山の歴史
 3 里地里山の再生にむけた市民活動
 4 里地里山に対する住民の風景認識
 5 これからの里地里山

第11章 「生きた風景」へ〜まちづくりと公共空間デザインの現代的意義 中井 祐

 1 まちづくりの時代
 2 景観まちづくりの目的
 3 コロンビアでの経験─デザインの真の役割とは
 4 現代日本の心の問題
 5 人間・自然を抽象化する近代
 6 抽象化した都市空間と緊張を強いられるわたし
 7 わたしのよりどころとなる場の喪失
 8 「生きた風景」へ─まちづくりとデザインの現代的意義

第12章 豊かな風景づくりへの哲学〜まなざしの賑わい 桑子敏雄

 1 「まなざしの賑わい」から「風景道」へ
 2 広重のまなざし
 3 人の生きる道としての風景道