駐車場からのまちづくり
都市再生のために

おわりに


 駐車場が街の重要な空間要素となっている現実を踏まえて、何をするべきか、〈3D+M〉の視点で考えを取りまとめようとして4年近い月日が流れました。公益財団法人国際交通安全学会事務局の皆様には色々とご迷惑をおかけしましたが、ようやく出版にこぎつけることができました。研究プロジェクトメンバーおよび執筆者を代表して厚く御礼申し上げます。
 なお、この間、現実社会でも駐車場法の改正について様々な議論がなされており、行政関係者の皆様にわれわれの研究成果を聞いていただく機会もいただきました。そういった議論の成果として、この本の印刷と併行して、駐車場をめぐる新しい法が具体化されつつあります。国土交通省が中心となって、低炭素都市社会を実現するための法律が用意され、その中で本書でも提案した附置義務駐車場の設置の考え方を「On SiteからIn Area」へ転換させる項目が入っています。おそらく、この本が書店に並ぶ頃にはこの新しい法律が成立し、駐車場政策の新しい扉が開かれているものと思われます。
 駐車場の議論はまだまだその端緒についたに過ぎません。誰にとっても便利で、安全で、環境に優しく、そして美しい駐車場を実現するには、駐車場を正面から見据えて、様々な人々の知恵をそこに注ぐことが必要です。我々の議論もまだまだ不十分であると感じています。物流車の取り扱いはどう考えるのか、自動二輪車・自転車駐車場との連携は必要がないのか、カーシェアリングやレンタカーとの関係をどう考えるべきか、ITを活用した管理システムの工夫は考えられないか、線を引くだけの駐車場整備を開発行為として把握しなくてよいのか、などなど議論はつきません。
 また機会を見出して、こうした残された課題に挑戦したいと思います。
 最後に、本稿をまとめるにあたっては、学芸出版社の前田裕資さん、森國洋行さん、研究室の吉野ゆう子さんに大変にお世話になりました。こうした方々の支援、協力、叱咤激励がなければ本書は完成しなかったものと思われます。深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
執筆者代表 岸井隆幸