つくること、つくらないこと
町を面白くする11人の会話

あとがき

 きっかけは本当にひょんなことだった。小さな会話がきっかけで、『ランドスケープデザイン』誌で「状況のつくり方」という連載が始まり、そしてそれが加筆、再構成されて今ここに一冊の本になっている。なんだか不思議な気持ちだが、まとまったかたちでいろいろな方に読んでもらえるチャンスが増えたことは正直とてもうれしく思っている。ここで語られていることになにひとつ100%の解答はないかもしれない。しかし、これからの時代にとって大切なことを考え、実際に試行錯誤していくためのヒントはたくさんちりばめられているのではないだろうか。少なくとも僕たちにとっては、ゲストの皆さんから本当に多くの示唆をいただいたと思っている。
 デザインという行為の意味を、そして風景やコミュニティの成り立ちに関わるということの意味を、今一度、問い直す時期がきているのだろうか。多くの異なる分野で、まったく異なる世代の人たちが、それぞれの思いで考え、いま実際に活動している。そのことに気がつくことが出来たのもこの連載のおかげである。「つくるひと、つくらないひと」という素朴な2項対立の図式も、議論の中核をあぶり出すのに思いのほか有効だったようにも思う。もちろん僕たちもそんな役回りを意図的も演じたわけではなく(少しは演じたけど)、二人の発言は同じ悩みを共有しつつ違うアプローチをとっているという立場から自然に生まれてきたものである。こうやって生まれたこの本がこれからの町や都市の風景、そしてそのかけがえのない価値について皆が考えていくためのささやかなヒントとなれば、それ以上うれしいことはない。
 最後になったが、僕たちがやろうとしていることの意図を理解し、連載というかたちで発表の場を与えていただいた上、その集大成を書籍にする事に同意していただいたマルモ出版『ランドスケープデザイン』編集部にこの場をお借りして深く感謝したい。また書籍出版に際してご尽力いただいた学芸出版社の前田裕資さん、井口夏実さん、中木保代さんにも心より感謝の気持ちをお伝えしたい。何よりもお礼申し上げなければならないのが、忙しい貴重な時間を割いてくださった9名のゲストの皆さん。本当にどうもありがとうございました。皆さんと過ごした時間は僕たち二人にとって本当に実り多いひとときでした。
編著者を代表して 長谷川浩己