パークマネジメント
地域で活かされる公園づくり

はじめに


 パークマネジメントとはパブリックオープンスペースの一形態である公園という生活の舞台を創り、守り、活用してゆく総合的な仕事のシステムであり、極めて長い時間と経費と労力を要する仕事である。この概念はもともとイギリス、アメリカ、オーストラリアなどで成立し、発展してきたものであり、日本では比較的最近になって普及し始めた。(社)日本造園学会のランドスケープマネジメント研究委員会が分科会で「パークマネジメントの理論的構築を目指して」をメインテーマに議論を続け、東京都でパークマネジメントマスタープランが行政計画として策定されたこと、指定管理者制度が導入されたことを契機として民間事業者の業態として広範な取り組みがなされるようになった。

 公園の管理運営は極めて公共性の高い事業であり、日本では太政官布達による公園の設置・管理の時代を経て、都市公園法の時代になって、整備、管理運営という2段階の公園行政に委ねられ、日本型ともいえる独自の管理システムが構築されてきた。近年、地方行政を取り巻くあらゆる事情から公園の管理運営が整備と切り離され、行政執行の効率化、合理化の観点から指定管理者制度の導入を契機として、管理運営事業の民間委託という形式が急速に浸透し、大規模公園から街区公園に至るまで、新しい仕組みで取り組むことが地方行政の主要な柱となり、地域住民による参画や民間事業者とのパートナーシップの手法開発が急務となってきた。

 しかしその一方で管理運営に関する思想や技術の体系は確立しておらず、試行錯誤で取り組みが始められている段階にある。イギリスでは地方自治体の重要な事業としてパークマネジメントが位置づけられ、マネジメントプランに基づいた事業展開がなされ、成果の表彰制度(グリーンフラッグアワード)と一体となって国家的プロジェクトとして動いている。アメリカでは自治体のパークアンドレクリエーション部局の直営的な事業として展開されているが、近年、民間団体が開発したマネジメントシステムを導入したり、事業そのものを委託したりするケースも増えてきており、コンサルタントなどの専門家、市民、企業スポンサーなど、さまざまな主体を取り込んだシステムが構築されつつある。

 日本では、「管理」主体になりがちだった公園が、ようやく「運営」「マネジメント」へと向きあうことにより、本来の姿に戻りつつある段階にある。本書は日本におけるパークマネジメントの構築を目指し、さまざまな視点や手法を提供することを目的としている。それらには単に公園の管理運営にとどまらず、地域づくりから公園のマネジメントを考える視点も多分に含まれている。

 本書では、第1章でパークマネジメントのフレームワークについて、第2〜4章でパークマネジメントの機能や手法について、第5章でパークマネジメントの事例について紹介し、最終章ではこのたびの東日本大震災を受けて震災復興に公園が果たす役割について論じている。

 公園づくりから地域づくりへと発展させていく第一ステップとして編まれた本書が、公園の管理運営に関わる専門家以外にも、広く地域づくりに携わる方々に読まれ、日常の活動に活かしていただきたいというのが著者一同の願いである。

執筆者を代表して 田代順孝