宝探しから持続可能な地域づくりへ
日本型エコツーリズムとはなにか

おわりに

  筆者らは「はじめに」で、「地域」とは行政の線引きによってつくられるものではなく、地域の生活文化の価値を認め合い、共有する人達のつながりと広がりこそが、「地域」であると述べた。いま町村合併によって地域の原像が失われていくなかで、二戸市をはじめ本書で取り上げた多くの事例地域の軌跡は、まさに、住民自身の手によって、この意味での地域を生み出すための活動であったといえる。その活動の原動力とは、言うまでもなく歴史の中で多様な自然との関わりから生まれ築き上げられてきた「地域の文化力」への「誇り」と愛着であることを多くの事例が語っている。この地域の文化力を用い、観光のしくみを活用して、地域の持続的な発展を目指す「日本型エコツーリズム」において持続的な展開を保障するものは、この文化力を、地域住民自身によって持続的に維持していくためのシステムの構築と運営である。この維持管理システムの構築・運営していくための要件は、地域住民と行政が一体となった恊働組織の設置と段階的課題の設定、計画論的な発想によるビジョン策定と達成目標の共有化、地域住民の活動を奨励し、また皆で共有するための担保制度であるといえる。

  筆者らをこのような確信に導き、本書を上梓する勇気を与えてくれたのは、20年近い関わりを持つ二戸市をはじめとする本書の事例地域をはじめ、各地で出会った、「日本型エコツーリズム」による地域づくりに取組む方々である。そうした方々からのメッセージを盛り込んだ本書が、多くの人の手に渡ることによって、人々に愛され自慢できる、また誇りうる、「地域」が日本中に満ちあふれるための一助となれば幸いである。

  本書の執筆にあたり多くの方々にお世話になった。ここではすべての方のお名前を挙げることはできないが、代表的な方々のお名前を下記に挙げさせていただき、深く感謝申し上げたい。

  まず、実際に地域づくりに関わる機会を与えていただき、実践を通じて多くのことを学ばせていただいた、西表島の石垣金星氏、石垣昭子氏(西表島エコツーリズム協会会長)、小原豊明前二戸市長、小保内敏幸二戸市長、南大東村職員宮城克行氏、高島市商工会女性部の皆さん、徳島県旧美郷村(現吉野川市)職員竹前晴夫氏、そしてそれらの市民や村民、島民の方々。

  研究者として資料提供を含め、多くの示唆をいただいた、石森秀三氏(北海道大学観光学高等研究センター長)、伊藤秀三氏(長崎大学名誉教授)、海津ゆりえ氏(文教大学准教授)、西原弘氏(NPO法人日本ガラパゴスの会事務局長)、吉兼秀夫氏(阪南大学教授)、前田弘氏(阪南大学教授)、花井正光氏(前琉球大学教授)。またボスニア・ヘルツェゴビナの情報を提供していただいた潟pデコの阪本日出雄氏、視察の機会を与えていただいた日本国際協力機構、二戸市及び旧美郷村の計画書作成に協力していただいた前田宏氏、竃「来政策研究所の職員の方々、さらに資料提供も含め多々お世話になったNPO法人日本エコツーリズム協会事務局の皆様に感謝したい。

  最後に、本書の刊行にあたって原稿を読み、厳しいアドバイスをくださった学芸出版社の前田裕資氏、編集の任にあたってくださった永井美保さんに感謝申し上げます。

2010年10月
真板昭夫