人口減少時代における土地利用計画
都市周辺部の持続可能性を探る

おわりに


 本書が扱う事例を拾い読むと、都市周辺部に位置する市街化調整区域での開発許可条例や調整区域内地区計画、線引きされていない白地地域での土地利用調整条例など、開発を容認する土地利用計画制度が紹介されており、開発圧力が弱まるにもかかわらず実際には広く薄く開発が進むことが予想される人口減少時代において、規制緩和を薦める事例集ではないのか、と印象をもたれたかもしれない。しかし、私たちの主張は、都市周辺部を、環境、経済そして社会のいずれの面からも将来にわたって持続的なものに再編するためには、土地利用を集約型に「選択と集中」する必要があると考えた上で、都市周辺部の土地利用計画制度を、「開発抑制中心」のものから、「持続可能なアーバンフォームを描き、計画し、その計画に沿って、土地が利用され、管理される」ものへ転換すること、である。
 線引き制度は、市街化区域内で計画的市街地形成を図るとともに、その外部の調整区域では都市的土地利用の規制を行うために区域を区分して「選択と集中」する制度である。ただ、マイカー利用による生活圏の拡大、商圏の拡大等により、狭い都市計画区域では郊外化がうまくコントロールできないこと、市街化を抑制すべき区域として市街化を規制誘導する仕組みが弱いため、開発許可制度の立地基準を満たせばほぼどこでも立地が容認されてしまい、地域維持のための生活環境整備の計画が策定しづらい市街化調整区域など、線引き制度には問題が少なくない。
 本書は、都市や農村をめぐる社会経済状況や都市や農村への期待も当時とは大きく異なることから、各自治体や地域社会が、都市計画区域外も視野に入れて、土地利用も都市的土地利用のみならず都市型農業、里山、河川湖沼などを含め、景観の観点も織りまぜながら、行政と地域社会が連携してアーバンフォームを描き、その実現に効果的な制度を組み合わせ、都市計画決定や開発許可権限をもつ県とも役割分担しながら、運営管理(コントロールとマネジメント)するという「選択と集中」を提案しているものである。
 本書が、都市計画やまちづくりに関わる行政関係者のほか、研究者、大学院生、およびまちづくりに関心をもっている議員、企業人、NPO等のリーダーなどが、それぞれの地域において、創造的にアーバンフォームを描き、コントロールとマネジメントに取り組む際の導きとなれば、望外の幸せである。
 末尾ではあるが、30本近い多彩な原稿の取りまとめにあたって途方に暮れる編者たちに、編集の方向性などを的確に示唆していただいた学芸出版社の前田裕資氏、並びに編集と校正に丁寧に対応いただいた森國洋行氏に、この場を借りて御礼申し上げたい。
2010年7月
編者