都市の自由空間
街路から広がるまちづくり

おわりに

 
 祭りが行なわれたり、市が開かれたり、人びとの雑踏する街路や広場の光景は、わたくしが建築や都市に関する学習や研究を始めて以来、一貫して興味の対象であった。そのような空間がわたくしには最も都市的にみえたのである。大学の卒業論文のテーマは「ちびっこ広場」、共同で行なった卒業設計は「河原町みちにわ計画」、修士論文は「移動商業施設」、そして博士論文のテーマが「都市の自由空間」であった。
 博士論文(工学)『都市における自由空間の研究』の内容を基礎として、一九八二年に、『都市の自由空間:道の生活史から』を中公新書として出版した。以来四半世紀が経ち、その後の研究や計画、まちづくりの実践の蓄積をふまえて、大幅に加筆修正したものが本書である。前書を改めて読んだわけだが、内容は色褪せてはおらず、よりその重要性が認識されているという思いをもった。そこで新しいバージョンの出版に取り組むことになったわけである。
 前書もそうであったが、本書も、かつての研究室の学生やまちづくりの仲間と一緒に取り組んだ、調査やプロジェクトの成果を素材にしている部分が多い。一つ一つ記すことはしないが、感謝の意を表したい。
 
 本書の出版にあたって、学芸出版社の前田裕資さん、小丸和恵さんにいろいろとお世話になった。末尾をかりてお礼申し上げます。
 
二〇〇九年九月   鳴海邦碩