住民主体の都市計画


はじめに

 
 本書を手にするのは、いったいどのような人達だろう。タイトルの「都市計画」という文字に目をとめた、建築・都市計画を専門とする方々か。あるいはサブタイトルにある「まちづくり」に興味を持った、活動をしている市民の方々だろうか。だとすれば、本書のタイトル全体をみて、それぞれこう思うに違いない。前者の方々は「まちづくりと都市計画はほとんど同じ意味ではないか」、後者の方々は「まちづくりと都市計画は関係ないのではないか」、と。
 一方からみれば「一緒」で、他方からみれば「別々」。まちづくりと都市計画は、そういう微妙な関係にある。こんな両者の関係を改めて捉え直して、「まちづくりの中で都市計画を役立てよう」というスタンスから書かれたのが、この本である。
 建築・都市計画の分野では、まちづくりの活動を通じて都市計画をつくるという流れが、当たり前に思われてきた面がある。でも「まちづくり」が扱う範囲は、今や都市計画の域を超えて幅広くなっているから、「都市計画のためにまちづくりをする」なんて言い方は、もう通用しない。両者を別々のものとした上で、順序を逆転させる、つまり「まちづくりのために都市計画をする」と考える方がよい。
 一方で、まちづくり活動をする人達は、都市計画が扱うハードの部分より、人の繋がりとかサービスといったソフトの部分が大切、と考える面がある。でもハードがあってこそソフトは成り立つから、「ハードが悪くてもソフトが良ければ暮らしやすい」とは言えないだろう。ベースとなるハードを高めることでソフトの機能も高まる意味では、「都市計画がまちづくりのためになる」と考えられるだろう。
 このような「まちづくりのための都市計画」という視点から、建築・都市計画を専門とする方々には「まちづくり」の意味を、まちづくり活動をする人達には「都市計画」の意義を、それぞれ改めて捉え直してもらいたい。そして、両者をうまくつなげて、互いに活用し合うことを考えてもらえればありがたい。
 本書全体、特に最後の論点部分は、多少挑戦的に書いている。論理が飛躍していたり、事実の検証が足りない部分もあるかもしれない。しかし、新たな時代を切り開いていくためには、多少型破りなチャレンジが必要ではないか。本書を読み進めていくことで、住民主体で都市計画を使っていく時代の息吹を感じ取ってほしい。

2009年1月
 コアメンバー一同