創造都市への展望


推薦の言葉

都市を計画する壮大なロマン−−−−−日端康雄(慶應義塾大学大学院教授)

 モロッコの都市を訪れて驚くのは、まだ、旧市街の迷宮が極めて良好な状態で保全されていることである。とりわけフェスの新旧市街のコントラストには驚嘆させられる。その背後には、フランス植民都市計画やCIAMの活動があることを本書は語っている。本書で扱われる都市計画の制度やツールには、それ自体、新しさがあるわけではない。街路線計画や土地区画整理など、基本的なものである。しかし、本書では、都市計画が本来もっていたはずの、都市の部分と全体が、相互に影響しながら統合されていくプロセスが描かれている。それは、フェス住民に独特の空間づくりの習慣によって可能となった。多くの研究者、実務家たちが忘れていた、都市を計画することの面白さ、壮大なロマンを改めて思い起こさせてくれる快著である。

画一的な伝統像を大きく打ち破る−−−陣内秀信(法政大学教授)

 イスラーム世界でも最も活気に溢れ、独自の造形で我々を魅了するモロッコ都市。特に古都フェスは、その迫力ある建築や都市の姿が繰り返し紹介されてきた。本書は、そうしたフェスのステレオタイプ化された伝統像を大きく打ち破る。著者が問うのは近代だ。フランスの植民支配下で、近代都市計画による新市街が生まれ、その外に離村民が流入し新たなイスラーム都市の郊外地ができた。だが独立とともに状況が大きく動き、それぞれの地区が流動し重層化し合って都市が変容した実像がリアルに描写される。都市計画とは? 近代とは? 都市性こそイスラーム文明の特質だが、近代にその性格はどう変化したのか? 気鋭の都市学者が現代的な視点で描く待望の近代イスラーム都市論である。