路地に関わる本は、これが初めてというものではない。数は多くはないけれど、路地の研究書や各地の路地を紹介する本が出版されているし、密集市街地問題では路地は隠れた主役となっている。しかし路地は都市に不可欠の存在ではないかという視点をもって、正面から多角的に路地を論じた本はこれまでほとんどなかったのではないだろうか。
そのような本を出そうという背景となったのは、全国路地のまち連絡協議会の活動や、神楽坂での路地をテーマとした連続のシンポジウム開催など、路地への関心が近年高まってきたことにある。特に直接的なきっかけとなったのは、2005年に神楽坂で開催された全国路地サミットである。その場の勢いもあり、東京大学の西村教授を中心に、神楽坂の寺田、山下、全国路地のまち連絡協議会の司波、今井で話がまとまった。近代都市計画で存在を否定され、負の遺産などとも言われる路地を復権したい、実際のまちづくり現場で見られる路地の魅力を伝えたい、と同じ感想を持たれている方々や研究されておらえる方々に声をかけ、なんとか当初の目標らしきものへと到達できた。
しかし想いが先行して実行が伴わない傾向がある執筆者の意欲を高め、尻を叩き続けていただいたのが学芸出版社の前田裕資氏である。彼の熱意により、この成果にたどり着くことができた。また資料の収集や、様々な面でご協力をいただいた関係者の方々に謝意を表したい。
本書では路地復権への道筋が曲がりなりにも示せたと思う。しかしまだ第一歩にすぎず、さらに路地の研究やまちづくりの活動を進めていく必要があると思っている。
編集幹事を代表して
今井晴彦 |