データで読みとく 都市居住の未来


書 評
『建築士』((社)日本建築士会連合会)2005. 7
  この本は、50年先の都市居住をデータから描こうとしているので、本の7割が統計資料で埋まっている。内容は、人口・家族から住宅・都市や情報にまで及び、大変幅広くまた興味のあるデータばかりである。
  日頃感じていることを、数字で改めて確かめることができるので、この本はまた、現状を知ることができる便利な本ともいえる。中には“そうだったのか”と小さく驚きを感ずるところもあるので、資料から先に読むのも面白いかも知れない。
  前半は、これらのデータに基づいて行った討論会の記録であるが、これがまた面白い。「家族は解体するか」「持ち家戸建て志向は薄れるか?」「都市への集中はなくなるか?」など、刺激的な見出しが並んでいる。
  われわれ読者も、自分の意見を持ちながら、討論に参加するつもりで読むと、もっと面白い。資料は東京中心であるが、全国平均や地方都市の資料もあるので誰でも参考にできる。
  近い将来は、統計数字の傾向からある程度は予測できるが、50年も先の遠い予測はたいへん難しい。いまから50年前のことを考えても、長期予測はほとんど当たっていない。
  そこでこの本は、“今後数十年間、楽しみながら読まれること”、を期待しているので、せいぜい長生きをして、都市居住の未来予測が当たるかどうかを楽しみたいと思っている。
(大海一雄)