住宅の結露防止


あとがき

 防露設計研究会は古くて新しい結露問題を、現場から、研究所から、大学からの多方面の関係者が忌憚のない意見を出し合い、共通認識のもとで結露対策を考えていこうとして、昭和60年に発会された。当初の参加メンバーは、住宅メーカー3社、1大学、1試験機関であったが、後、硝子メーカー1社が加わり、本書の発刊まで153回の会合を重ねた。最初は会則など決めず、結構気の合った仲間意識で、気楽にそしてフランクに話し合うことから始まった。しかし、参加したメンバーは、真面目であること、結露問題のプロ意識と自信から、それぞれが結露についての各自の意見を持っていることがわかった。結露という単純な現象、したがって明確な結露対策が常識であるにもかかわらず、現実の結露問題が未だに解決されていないという共通認識があった。まず、メンバーの結露に対する常識を出し合い、そしてこの常識の妥当性を検討し、共通の認識をお互いに持ち合うことから始めた。 
  以後、月1回のペースで検討を重ねていった結果をもとに、昭和62年から平成2年の約3年にわたって、(財)日本建築総合試験所の季刊誌「GBRC」に「住宅の結露防止(その1〜11)」を連載した。連載の過程においても、内容のさらなる検討や新たな事例、問題についての検討も行なっていった。
  約6年、防露設計研究会を行なって、「GBRC」への連載という形で研究成果もまとめることができ、メンバーもそれぞれ一段落したなという気持ちと良くやってきたなとの満足感を持ったようであった。研究会もこの段階で一応終わりにすることも検討された。しかし、これまでの産学の枠を超えての真摯な意見交換とお互いの友情を維持したいという全員の希望から、「GBRC」に掲載した内容をより充実し、実務から研究まで幅広く、かつわかりやすくという大変贅沢で無謀な趣旨のもと、本書の出版に取り組むこととなった。
  研究会発会以来、検討はすべて研究会での議論のうえ、メンバー全員の理解のもとで行なうことが暗黙の了解であったので、各章の担当者を決めていたが、各章は必ず研究会で議論し、その結果を全員の総意として原稿にした。本書の出版には、以後12年の歳月を費やした。この間、各メンバーの部署・所属の異動や、平成7年度にあの阪神・淡路大震災もあり、メンバーも会の出席・検討の継続には苦労した時期もあった。このような状況のなかで、出版にこぎつけられたのは、防露に対する想い、会への想いから可能な限り出席されてきたメンバーと、会の趣旨を理解し我々初期のメンバーを引っ張ってくれた若きメンバーの協力の結果であろう。本書が関係諸氏にとって大いに役立つことを期待したい。
  最後に、本書の執筆者以外に、一時期メンバーに加わっていただいた方々、また多くの方々にも協力・意見をいただいた。記して、謝意を表します。また、本書の出版に当たって、学芸出版社・編集部の越智和子氏に、ひとかたならぬご協力を受けた。記して、心よりお礼を申し上げます。 

平成16年3月
執筆者代表 池田哲朗