耐震木造技術の近現代史
伝統木造家屋の合理性

目 次


序章 わが国の耐震構造の原点


1 震災と構造技術
2 伝統木造と在来木造
3 在来木造の定義
4 兵庫県南部地震の木造被害を考える
 4・1 伝統木造はあったのか?
 4・2 兵庫県南部地震の木造被害を振り返って
 4・3 直下地震での木造建築の被害例
 4・4 直下型地震特有の被害と原因──「ホゾ抜け」について

古代・中世から文明開化へ


第1章 和風木造と洋風木造

1 構造からみた洋風と和風木造
 1・1 和風木造の現状
 1・2 消えつつある和風木造の背景
 1・3 洋風と和風木造の仕組みの違い
 1・4 和風木造住宅と洋風木造住宅
 1・5 洋風の伝統木造について
 1・6 西洋の伝統的土壁について

2 古建築の構造技法
 2・1 民家の軸組
 2・2 茅葺屋根の仕組み
 2・3 古代の社寺建築のサス組
 2・4 古代の社寺建築の大釘
  ◆1 頭貫と柱の結合大釘
  ◆2 国宝薬師寺東塔の大釘
  ◆3 古代釘について
  ◆4 古代釘と長押について
 2・5 古代の筋違
 2・6 貫工法について
  ◆1 貫の導入
  ◆2 社寺建築の貫構造

江戸末期〜明治初期


第2章 耐震研究の黎明──幕末の地震活動

1 地震学事始め
2 安政の大地震
3 安政奈良地震を巡って
4 小田東がくの木造耐震対策案

明治中期


第3章 濃尾地震後の木造家屋耐震化の機運

1 濃尾地震について
2 震災後の調査活動
3 濃尾地震での木造被害を巡って──和風か洋風か
4 震災後の耐震木造論
 4・1 J・コンドルの見解
 4・2 『地震』にみる横河民輔の見解
 4・3 米国建築師、伊藤為吉について
 4・4 『日本建築構造改良法』の見解
  ◆1 安全建築鉄具の提案
  ◆2 水害地適用地震耐家屋
  ◆3 四つの標本家屋
 4・5 『地震家屋』にみる佐藤勇造の見解
  ◆1 被害率評価の概要
  ◆2 耐震建築一三カ条について
  ◆3 土蔵の耐震性について
  ◆4 火の見櫓の耐震性を巡って
  ◆5 洋風木造の耐震性と伝統家屋の耐震化の方策
  ◆6 耐震家屋試験盤の考案

5 佐藤勇造と伊藤為吉を巡って

明治中期〜末期


第4章 震災予防調査会の活動

1 わが国初の地震研究機関“震災予防調査会”の創設と木造家屋の耐震研究
 1・1 濃尾地震前夜
 1・2 耐震研究の世論形成
 1・3 地震研究機関の創設への世論
 1・4 菊池大麓の建議と震災予防調査会の創設
 1・5 福澤諭吉と菊池大麓

2 震災予防調査会における耐震木造の研究
 2・1 震災予防調査会の研究方針について
 2・2 人為地震台について
 2・3 耐震研究施設の整備事業
 2・4 辰野金吾の耐震煉瓦造建物
 2・5 水平・上下二方向の人為地震台
  ◆人為地震台のメカニズム
 2・6 人為地震台の試験建屋

3 大型の耐震架構モデル“木造耐震建築雛形”について
 3・1 鳥居について
 3・2 棟門について
 3・3 日本家屋について
 3・4 洋風家屋について

4 世界初の大型振動台“人為地震台”を巡って
 4・1 人為地震台の製作
 4・2 木造家屋の耐震研究の推移
 4・3 人為地震台の稼働について
 4・4 当初の振動台の性能について
 4・5 人為地震台の改修について
 4・6 煉瓦造耐震建屋と人為地震台試験施設の変遷
  ◆明治中期の帝国大学理科大学の施設拡充について
 4・7 大森式地震計を巡って
 4・8 耐震煉瓦造建築のその後

5 日清戦争期の地震災害と木造家屋耐震論
 5・1 震災予防調査会での耐震木造家屋の研究動向
 5・2 東京地震と庄内地震
 5・3 野口の震災復旧調査
 5・4 中村太助の接合法
 5・5 地業の改善
 5・6 捨算盤地業について
 5・7 木造家屋の耐震対策を巡って
  ◆1 曽根達蔵の見解
  ◆2 野口孫市の見解
 5・8 野口孫市と坂静雄の貫理論
  ◆1 坂静雄の貫の研究──国宝法隆寺金堂壁画保存を巡って
  ◆2 野口の貫理論

6 耐震木造校舎の試案“耐震雛形”を考える
 6・1 義務教育制度と木造校舎建設
 6・2 学校教育の近代化の歩み
 6・3 文部大臣官房会計課建築掛と各種の学校建築規則
 6・4 小学校建築図案について
  ◆1 通達の背景
  ◆2 構造方説明概略の概要
  ◆3 附図について
 6・5 東京地震と「学校建築上震災予防方」
 6・6 三島通良の学校建築研究
 6・7 「学校建築図説明及設計大要」について
 6・8 洋風と和風の窓開口について
  ◆1 上げ下げ窓
  ◆2 引き違い戸
 6・9 震災予防調査会と文部省会計課建築掛の関与

7 各種の耐震木造建築の試案について“耐震木造雛形”を考える
 7・1 耐震木造雛形のその後
 7・2 震災予防調査会創設時の研究計画と成果
 7・3 庄内地震後の耐震家屋木造雛形
  ◆1 町家一棟改良構造仕様について
  ◆2 農家改良構造仕様について
 7・4 改良日本風木造家屋の建設
  ◆1 根室の耐震標本家屋
  ◆2 深川猿江の耐震標本家屋
 7・5 野口孫市の日本風住宅改良構造仕様
  ◆1 伝統木造に対する基本姿勢
  ◆2 日本風住宅改良構造仕様について

8 再び伊藤為吉を巡って
 8・1 造家学会との関わり
 8・2 耐震煉瓦造との関わり
 8・3 帝国大学工科大学での耐震木造の研究
  ◆1 研究従事の時期について
  ◆2 震災予防調査会嘱託員の時期について
 8・4 金物接合批判
 8・5 耐震的鉄具──ボルト接合雛形の構造実験の顛末
 8・6 わが国初の大型構造実験
 8・7 ボルト接合の改善策
 8・8 伊藤の耐震木造工法──新式大工工法を考える
  ◆1 敷土台と床束なし工法──基礎免震の提唱
  ◆2 滑り支承について
  ◆3 火打木を用いた切組
 8・9 伝統木造への回帰

9 世界初の“人為地震台実験”を巡って
 9・1 完成した人為地震台と振動実験の本格化
 9・2 J・ミルンと大森房吉の世界初の振動実験
 9・3 人為地震台を用いた煉瓦造柱の振動実験
  ◆1 振動実験システムについて
  ◆2 煉瓦造試験の概要
  ◆3 等一耐震力曲線について
 9・4 等一耐震力曲線の応用
  ◆1 耐震煉瓦構造への適用について
  ◆2 東京タワーと磐城無線送信塔
  ◆3 伝統木造構造物にみる等一耐震力曲線
 9・5 大森式地震計と振動計測装置のアナロジー

大正〜昭和(戦前・戦後)


第5章 激震に耐える木造建築

1 地震活動期を迎えて──木造家屋の耐震法令史
 1・1 近年の直下型地震での木造家屋の被害率
 1・2 耐震強度と法令
 1・3 市街地建築物法の時代
  ◆1 当初の市街地建築物法施行規則
  ◆2 市街地建築物法施行規則の大改正
  ◆3 施行規則の見直し
  ◆4 室戸台風の被害と終局設計理論の展開
 1・4 戦時建築規則について
  ◆1 木造建築の戦時統制について
  ◆2 積載荷重の見直し
  ◆3 許容応力度の変遷
 1・5 戦後の建築基準について
  ◆1 建築規格3001号
  ◆2 建築基準法の構造規定とその背景

2 柱の太さを考える
 2・1 屋根の荷重と柱の太さ
 2・2 物法施行規則第五三条について
 2・3 改正物法施行規則第五三条と建築基準法施行令第四三条
 2・4 細い柱の構造リスク
 2・5 二乗則・三乗則・四乗則
  ◆1 軸方向力に対する強さ
  ◆2 曲げモーメントに対する強さ
  ◆3 曲げに対する剛性
  ◆4 コストを考えると
 2・6 「太めの柱」と「貫」「鴨居」のすすめ
 2・7 「金物接合」のアキレス腱

3 土台と基礎の緊結を考える
 3・1 伝統木造建築の移動現象
 3・2 初の加速度型地震計の開発と地震加速度の実相
 3・3 地震動の破壊力を巡って
 3・4 基礎移動に関する戦前のコンセンサス
  ◆真島健三郎の柔構造建築
 3・5 佐野利器・武藤清の免震基礎論
 3・6 高い基礎と低い基礎
  ◆アンカーボルトの義務化について
 3・7 戦前の基礎免震木造システムの評価

4 伝統木造家屋の耐久性を考える
 4・1 川村清一の見解
 4・2 聴竹居を訪れて

5 伝統木造建築の復権を目指して


あとがき
耐震年表
註・参考文献