CREATIVE LOCAL
エリアリノベーション海外編



おわりに:理想の風景から、方法を逆算する。


 地方都市の郊外のバイパスを車で走りながら、いつも思うことがある。僕らはこの風景を望んでいたのか。安価なモノが均質に並ぶ、日本中どこにでもある風景。この風景は欲望の集積であり、僕らが望んだものだ。そこで手に入れたものは何だったのだろう?
 この本で考えたかったのが、風景から方法を逆算すること。衰退の先に新しい幸せな風景を発見し、その風景が形成されるメカニズムを探すことだった。国は違っても、変化の構造は驚くほどシンクロしていた。所有から共有へ、ヒエラルキーからネットワークへ、組織主導から個人の活動の集積へ、集中から分散へ。あらゆる街で価値観の逆転が起こっていた。
 そしてわかったのは、衰退は悲しいことではないということだ。それは、ひとつの現象であり、ポジティブに受け入れ、楽しむべきものなのだ。
 人口が減り、既存のシステムに隙ができるからこそ、新しい発想や活動が入り込み、これまでになかった価値を生み出す余地ができる。だから、突き抜けたクリエイティブは、衰退の先にこそ生まれている。
 日本の社会は、これから大きな実験の時期を迎えるのではないだろうか。僕らは今からそれを楽しまなければならない。
 この本の編集を通し、世界のいろいろな街で試行錯誤を繰り広げる建築家や研究者に出会うことができた。斬新な切り口と卓越した文章が揃ったことで、「風景と社会システムの関係性」を論じた、これまでにない存在感
を放つ本ができたと思う。この新たな才能たちが、次の時代の都市の論者/実践者になっていくだろう。
 最後に、常にしっかりとした視野でこの本の構想から導いてくれた東北芸術工科大学研究員の佐藤あさみさん。いつも的確な視点によって全体構成からディティールに至るまで、僕らの散らかった思考と文章をまとめあげてくれる学芸出版社の編集者、宮本裕美さん。
 みなさんの存在なくして、この本はありえませんでした。とても感謝しています。ありがとうございます。

2017年11月
馬場正尊・中江 研・加藤優一