北欧の建築
エレメント&ディテール





あとがき

 北欧の建築に魅了され、何度も現地を訪れるようになってから十数年が経つが、本書でこれまでに体験してきた北欧の建築をエレメントとディテールに焦点を当ててまとめる機会が得られたことを大変嬉しく思う。
 冒頭に記した「北欧の建築について」は、数々の作品を実際に体験していくなかで考えてきたことを整理しまとめる良い機会であった。そこにも記したが、北欧の建築には実際に体験してみなければその質の高さや豊かさがわからないものが本当に多い。本書ではその魅力をできるかぎり伝えることを心がけたつもりだが、この本をきっかけとして多くの人が現地に足を運び、北欧建築の魅力を体感していただければ本望である。そして、その体験が、建築の設計だけでなく、今後の私たちの生活をよりよくしていくことへの一助になれば、嬉しいかぎりである。
 本書で紹介した事例の写真については、一部を除いてすべて筆者が撮影したものである。写真に添えた図面は、現地で実測し作図したもの、既存の図面をトレースしたものがほとんどだが、図面が入手できなかったものについては実物や写真から推察して描いたものもあり、統一はとれていない。記載した寸法に関しても、実測値のほか、図面から換算した概算値を記している箇所もある。図面に方位の記載がない事例については、Googleマップより特定したものもある。それゆえ、厳密な図面・数値というよりも、理解を助けるための概要図・参考値として捉えていただきたい。作品名や建築家名、所在地などの日本語読みについては、現地でも役立つようにできるだけ原語の音に近づけるよう努めたが、すでに日本での表記が一般化しているものについてはそれに従うこととし、結果的にはそれらが混在する形になっている。
 本書ができあがるまでには、多くの方々にお世話になった。ルイスポールセン社の荒谷真司さん、高橋亜須未さんには、デンマークの貴重な情報を提供いただき、同行させていただいた研修ツアーで訪れた事例も本書に掲載している。また、吉田桃子さんにはフィン・ユール邸に関する大変貴重な修士論文を貸していただいた。指導教授の大野仰一先生にも御礼を申し上げたい。そして竹内晧先生からは、フィンランドの伝統的な木造教会の構法について大変有益な助言をいただいた。
 本の編集・作成にあたっては、日本語読みの監修でお世話になったリセ・スコウさんと坂根シルックさん、また限られた時間の中で数多くの作図をしてくれたnLDKの井形寛さんならびに小泉研究室生らに感謝いたします。学生たちの協力がなければこの本は完成しなかっただろう。
 学芸出版社の宮本裕美さんには、企画当初より編集、そして完成に至るまで、終始うまく進むよう導いていただいた。編集では、同社の森國洋行さんにも大変お世話になった。素敵なブックデザインを施していただいたSatis-Oneの凌俊太郎さんにも感謝します。
 そして、武蔵野美術大学名誉教授の島崎信先生からは、著書はもちろんのこと、講演会やその後の懇談の場などで、北欧建築の基盤となる考え方や貴重な情報をはじめとして本当に多くのことを学ばせていただいた。この機会に改めて感謝の意を表します。
 最後に、数々の見学調査でサポートしてもらい、刊行まで温かく見守ってくれた妻、智子にも感謝の気持ちを伝えたい。

2017年3月
小泉隆