マンション建替えがわかる本
円滑化法改正でこう変わる!

はじめに

 今、多くのマンションが、「建物の老朽化」と「住民の高齢化」という二つの老いに直面しています。築30年以上のマンションは、平成23年度末に100万戸を超え、さらに平成32年度末には200万戸を超えると推測され、これからの10年、旧耐震基準・高経年マンションは続々と建替え問題に直面するでしょう。しかし、現状の建替え実績は196件、約1万5500戸にとどまっています。
 この背景には、建替え費用や仮住居等の資金面の問題と、法改正や都市計画の変更等によって現行法規に適合しない部分がある「既存不適格建築物」等、複雑かつ多岐に渡る法律面の問題があります。また、マンションや管理組合の特性を良く知り、管理組合特有の合意形成を助ける建替えの専門家がまだまだ限られていることや、建替えの初期検討時に説明すべき、管理会社のフロント担当者等に建替えの正しい知識がなく、区分所有者等に正しい提案ができていないことも要因として考えられるでしょう。
 国としても、これらの事情や巨大地震の発生に備える必要性から、耐震性不足のマンションの耐震化の促進が喫緊の課題であるとして、建替えの法整備を進め、平成26年12月に「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」の一部改正が施行されました。本書では、この改正で制定された「マンション敷地売却制度」や「容積率の緩和特例」についても解説しています。近い将来必ず来るマンションの建替えについて、検討を開始する際の基礎知識から最新情報までをわかりやすくまとめました。また、建替え後のイメージがつかめる成功事例も多数収録しています。マンション住民・管理組合はもとより、管理会社のフロント担当者、不動産・建築に携わる皆さまの建替え検討時の初歩的バイブルとして、ご活用いただければ幸いです。

日下部理絵・本山千絵