ようこそドボク学科へ!
都市・環境・デザイン・まちづくりと土木の学び方

編集後記

 例えば直線なら最短距離のはずの高速道路が曲がっているだとか、川の中の橋脚は小判型だとか、高架道路も道路を跨ぐところは鉄だとか。それらにはすべて意味がある。ドボクを学ぶつもりではなく、実はなんとなく入ってきた学生も多いドボク学科。そんな学生にとって、ドボクの授業はおそらく苦痛でしかないだろう。でも日常はドボクであふれていて、すべてに意味があることを考えながら聞けば、きっと授業も面白い。本書の編者が集まった最初の会議は、それぞれのドボク話で大いに盛りあがった。そんな雰囲気を盛り込みたいと思った。この本を読んで、ちょっとマニアックなドボク的学生生活を楽しんでほしい。

真田純子


 ドボクに足を踏み入れて15年。今思うのは「ドボクって楽しい!」ということだ。その理由を本書の編集を通して考えていた。結論としては「ドボクは難しい」からだと思う。土木工学は「Civil Engineering」、市民工学である。市民の幸せとは? その幸せのために何ができる? それを考えるのがドボクであり、土木技術者だ。人や地域、それぞれに異なる“幸せ”を理解するのは難しい。だからいろんな場所に行き、人に会い、対話し、理解しようとする。答えが出るときもあれば、出ないときもある。だけど、人とのつながりからこの難題に向き合うことが、今は楽しくて仕方がない。皆さんにもドボクをとことん楽しんでほしい。この本がその一助になれば幸いだ。
中村晋一郎


 ドボクという分野があることを知ってはいるけれど、人々の生活に密着した分野らしいけれど、何となく漠然とした感じがして大学で何を勉強するのかよくわからない、といった声を耳にすることが少なからずある。そんな声への回答のひとつがこの本だ。私自身もこの本でドボクの魅力を再認識できた。普通に、何の問題もなく利用できて“当たり前”の土木施設には、さまざまな技術が用いられ、多くの先輩たちが知恵を絞って携わっていることを誇りに思ってもらいたいし、積極的に仲間に加わってもらいたい。そういった思いを少しでも伝えられたのであれば、この本の編著に携わったひとりとして幸せに思う。
仲村成貴


 大学では学びはじめたばかりの学生にドボクの全体像を伝える機会があまりない。それが学生の興味喪失や漠然とした不安感につながるのではと気になっていた。しかし、たとえ機会を与えられたとしても、多岐にわたるドボク分野のなかで、ひとりの教員が全体を語ろうとすることには躊躇がある。正規カリキュラム以外での時間の使い方、広い意味での勉強の仕方については断片的にしか伝えられないことをもどかしく感じていた。そういった意味で、この本は私個人としても待望の本だ。この本が多くの学生諸君にとってドボクの広さと面白さ、楽しみ方を知るきっかけになることを願う。
福井恒明