プロが教える住まいづくり
困ったことになる前に

はじめに

□住まいづくりでは、人生をかけた大金が動きます。
 ですから、お金の使い方を有効に考えることが大切です。
□住まいは、手にしてしまうと、「しまった」と思ってもそう簡単に建て替えやリフォームできません。
 ですから納得の住まいで長く住み続けたいもの。
□住まいは、一旦暮らし出すと、アッという間に10年、15年、20年、25年が経ってしまいます。
 ですから、長い目で空間・構造を考えておくことが大切です。

そして、次のようなことも意識しておくことが大切です。
□住まいに合わせて暮らすのではなく、家族の暮らしに合った住まいにしたいものです。
 ということは、暮らしをよく考えた設計が大切です。
□住まいは、人を変える大きな力を持っています。
 ですから、空間の設計・インテリアの設計はじめ、多角的に考えることが大切なのです。
□住まいには、手入れ(メンテナンス)が必要です。
 ですから、メンテナンスのしやすさや後に発生するメンテ費用のことを考えた設計も大切です。

 このように(これ以外にも…)、大きな意味を持つものですから、よく考えることが大切なのです。ですから、建築主の方が、「一生懸命勉強しなければ!」と動き出します。住まいに関する情報源には、本・ネット・友人・住宅展示場・DM等々たくさんあります。
 それらをもとににわか勉強をし、「わかった」と思い、その判断を元にどんどん住まいづくりを進めていく建築主の方や、わからないので、ある日出会った施工業者や設計者に頼ってその方主導でどんどん進めていく建築主の方が多いように思われます。
 しかし、じっくりと、多角的に、よく考えてみると、「わからない」「難しい」「何がよいのだろうか?」「何を基本に考えるといいのだろうか」…「わからない」ということがわかってきます。
 「わからないことがわかる」これは、「納得の住まい」を手にしようとする方にとって素晴らしい意識の一歩だと思うのです。
 だって、人生の中で何度も体験することのない「住まいづくり」についていくら多くの情報が目の前に転がっているといえども、そして、急に考えようとしても、そう簡単なものではないからです。
 住まいづくりがスタートする前に、住まいづくりに関する全体像や考えるポイントがはっきりわかっていればいいのですが、残念ながら、モヤのかかった中で(本人はモヤの中であるとは気づいていないことが多いのですが)スタートを切っており、動き出してから、「イヤ待てよ! これで本当にいいのだろうか?」「何かもっと考えておかなければならないことがありそうだ」等々のことに気づき出す方々もいるのです。住まいづくりを考えている建築主の方々には「納得の住まい」を手にしていただきたく思うのです。しかし「納得の住まいづくり」を実現させるためには、実に多くの条件を、専門的な知識をもとに同時に検討していくことが必要なのです。
 「そう言われても…。いったいどうすれば納得の住まいを手に入れることができるのですか?」との問いに答えるものの一つとして本書をまとめました。
 「私達が暮らす納得の住まい」を手にしたいとの願い(夢)を捨てずに、とてもとても多くのエネルギーや費用を使い願いを手にした方々がいます。しかし、これからスタートする方々には、もったいないエネルギー・費用をかけず、「納得の住まい」を手にしていただきたいと願うものです。
 また本書は、2013年3月に出版した『住まいづくりのウソ?ホント?』(学芸出版社)の姉妹本として書きました。「納得の住まい」の道標として、あわせてお読みいただくことを希望するものです。

住まいの研究室 井上まるみ