全国のR不動産
面白くローカルに住むためのガイド



R不動産の仲間たち
吉里裕也 (東京R不動産/スピーク共同代表)


「ウチの街でもR不動産をやってみたいんです」
ありがたいことに、僕らのところには、全国からこんな相談がある。その相手も不動産会社、デザイン事務所、建築家に加えて、地元の工務店、出版社、まちづくりNPOなどさまざまだ。R不動産というメディアがどんな動機で、何のためにつくられているのか、僕ら自身にとっても教えられるところが大きい。

そして僕は、できるかぎり直接お会いして話をうかがうようにしている。
それは、「どの街で行うか?」よりも「誰と行うか?」が大切だと思っているからだ。地方でR不動産が最初に始まった場所は金沢だった。それは、僕自身がかつて住んでいたので地域のことをよくわかっているということもあったけれど、何より小津さんという素晴らしいパートナーに出会えたことが大きかった。
不動産はそれぞれの地域ごとに、独特の特性や古い体質があったりするので、そこを一緒に変革していくローカルパートナーの存在はとても重要なのだ。その後、いろんな地方でそんな出会いに恵まれ、R不動産が少しずつ増えていくことになった。ただ、無闇に増えればいいとは思っていない。僕らにとってもパートナーにとっても、時間もかかるし覚悟も求められるからだ。最短でも半年、長いところで準備に2年以上かかったエリアもある。
パートナーは、お客さんを物件に案内したり、契約や管理といった不動産業の一般的な業務の体制が必要なのはもちろん、それ以外に物件を発見し、取材し、写真を撮り、文章を書いて伝えるというスキルを習得しなければならない。
感覚の共有も重要だ。僕も必ずその街に行って動き回る。街の空気や大きさを自分の足で感じ、物件をいくつも回り、その街の魅力をパートナーと一緒に発掘していく。その過程の中で、どんな物件が魅力的で、物件のどこがグッとくるのかなどを皆で共有し、各エリアの特徴を切り取った「アイコン」に落としこんでいく。

そして、最も難しく、一番重要なのは、魅力的な物件を「継続」的に紹介していくことだと思っている。僕らはメディアとして、常に新しい視点で物件を発掘し提供し続けていかなくてはいけない。

すぐ成果が出るものでもない。マス向けではないから、ある程度の人口規模や都市性がなければ難しいだろう。

ただ、R不動産というのは、自分たちの街に対する愛着があり、なおかつ、もっと楽しく変えていきたいと思っていて、そこに住んでほしいと真摯に考えている、そんな人たちによって運営されてきたし、これからもそうした仲間たちと一緒に続けていきたいと思っている。